ツクル伯父さんの思い出②

実家の実家(厳密に言うならば母方の祖父祖母の住んでいたウチ)を母親が掃除していたそうだ。
数日前のことである。

そうしたらツクル伯父さんが読んでいた手塚治虫の漫画が何冊か出てきたとのこと。

小学校の高学年くらいからだろうか?
僕は手塚治虫に心酔し、今でも手塚治虫の漫画が大好きだ。その一因ともなったのがツクル伯父さんの存在でもある。

そんな伯父さんが読んでいた本ならば…ということで、母に頼んで小包で送付してもらった。


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30冊くらい送ってもらった本は、そのほとんどが手塚マニアである僕には既に読んだことのある作品だったが、本の奥付を見てみると今から40年とか50年くらい前の「リアルタイムで発売されていた本」ばかりだった。

僕が幼い頃とか、遥かそれ以前に手塚治虫によって描かれた漫画。そしてツクル伯父さんが新刊本として購入して読んでいた単行本。

ツクル伯父さんが生きていれば80歳を越えた頃だから、ツクル伯父さんは今の僕と同じくらいの歳の時とかもっと若い頃に買って読んでいた本なのだろう。


カバーもなくなり、読み込まれたことが分かるような本の傷み方。

ツクル伯父さんのうちにお邪魔して手塚漫画を貪るように読んでいた時も、伯父さんの漫画は多くがダンボールに乱雑に入れられていて「とにかく読み耽る手軽なもの」として扱われていた記憶がある。きっと、コレクションとかではなくてマンガなんて読み漁ってその内容を頭に入れるものなのだ…というふうにツクル伯父さんは考えていたに違いない。

僕がツクル伯父さんのうちに漫画を読みに行っていた中学生の頃は、ちょうど角川書店から「火の鳥」のハードカバー本が発売されていた。その10年くらい前に発刊された「講談社手塚治虫全集」は絶版していて、古本屋で見つけるとめちゃめちゃ喜んで買い漁ったりしていた頃だ。

そんな「手塚治虫漫画全集」もツクル伯父さんのうちには何冊もあった。喜び勇んで借りて帰り、そのうちの何冊か、いや、何冊もがその後も僕の実家の本棚にあるように思う。簡単に言うと「借りパク」なのだけど…。


ツクル伯父さんのうちに遊びに行って漫画を読んでいると、ツクル伯父さんの連れ合いである「ヒロコ伯母さん」が僕にとても親切にしてくれた。

ツクル伯父さんとヒロコ伯母さんには娘さんが二人いたが、男の子供はいなかったので、僕は「乱雑な男の子」というだけでヒロコ伯母さんにとても可愛がってもらえた。

ヒロコ伯母さんが僕のウチには遊びに来ていた時に、僕は外で泥まみれになって遊んで帰宅して母親からはひどく叱られたのだけど、ヒロコ伯母さんは「そんなに叱られるくらいならウチの子になればいい!おばちゃんなら喜んで洗濯してあげるよ」と言われたことも思い出した。

そして、ヒロコ伯母さんは僕が漫画を読みだけお邪魔して非常に無愛想にしていただろうのに「○○は読んだ?アレも凄い面白いよ」と手塚書評を僕に授けてくれていたことも思い出した。

手塚治虫、そしてツクル伯父さんが思い出させてくれた一族の思い出。

近いうちにヒロコ伯母さんに手紙でも出してみようかと思う。