まあ、飽きもせず……という感じで、来る日も来る日も食物のことを書いてばかりいるのだけど、それも仕方ない。
日々の生活の中で、食物について思うことが多いのだ。僕は食いしん坊なのだ。そして、僕は食い意地が張っているのだ。否定など出来ようはずがない。
…さて、存分に言い訳をしたところで、僕の好物について話をしよう。今回も食物の話である。
季節にマッチした安価な食材を自分で料理して食べるのが好きだ。ちゃんと選んで、ちゃんと手を入れた食物は大抵なんでも美味しいと思いながら食べている。
しかし、僕が本当に好きなものと言うと「貝」なのである。まず、貝であれば殆どのものが好きだし、この貝はちょっと…なんて言うような嫌いな貝などない。全ての貝が好きだ、多分。
そんな貝の中でも群を抜いて好きなのが鳥貝である。
子供の頃から開いて茹でられたものを刺身として食べる機会はあった。美味しいとは思っていたが、食物の中で一番…というほどではなかった。むしろ、小さな頃は「なんで貝なのに色が黒いの?」と味と関係のないところが気になって、それほど好きなものでもなかった覚えがある。
大人になって、型の悪い小さな鳥貝を茹でたものが安くに売られているのを見つけて、鳥貝の摂取頻度は増えた。黒い貝を噛みしめるうち、この貝の虜になった。
今夜、そんな鳥貝を食べた。
買ってきた鳥貝をさっと塩茹でにしていただく。
ふっくらと柔らかな身だけど歯応えもしっかりとある。
噛み締めると出てくる甘みと旨味。どういう訳か色は黒くないので、鳥貝のように見えないけれど、美味しい。
どんな味かを覚え込もう…なんて思っているうちに、全てを平らげてしまった。
テレビの食リポの裏側なんかで「本当に美味いものを食べた時は何も喋りたくなくなる」と聞いたことがあるが、それはやはりそのとおりで、考えたりする間もないくらいに次から次へと食べてしまったのだ。
もう3〜4年前だろうか?
その年は「鳥貝の当たり年」だったようで、生の殻付き鳥貝を何回かスーパーで買って食べた。生で食べるよりも、さっと茹でたものをワタごと食べるのが美味しいと思ったのもこの時だ。
それからというもの、僕は4〜6月頃になると、魚屋の一角に殻付き鳥貝が置かれていないか目を配る用になった。
しかし、僕が、は見つけられるのは開いて茹でてトレイに並べられた割と高価なものだけだった。小さなものを茹でた安いやつすら見ていないし、殻付きなんて「そんなものはこの世に既に存在しないのではないか…」というくらいに見なかった。
そんな「待望の鳥貝」だったから、あっという間に食べてしまったのだろうが、後悔などしていない。本当に美味しかった。また出会えることが楽しみだ。
そう、あっという間に食べてしまい「さよならしなければ、また会えないじゃないか…」だ。まだしばらく、魚屋の鳥貝パトロールを続けようと思う。