【旅の思い出】大分に向かう

今回もこの「夏旅」の思い出を記す。

朝から自転車に乗って活発に動き、山陰出雲を堪能した僕は、日本海の海産物といつものウィスキーで楽しい一時を過ごした。出雲に到着して2日目の夜、宿の自室でのことである。


滅多に訪れることもない出雲くんだりまで、折角出掛けたのだから、地元の鮨屋だとか評判の居酒屋にでも行って地酒と魚で美味しい一杯をやればいいのに…なんてことを思わなくも無い。

何なら、その後で地元のスナックにでも行って地元訛の強い年配ママさんと楽しい一時を過ごすのも、それはそれは楽しいことだろう。

しかし、現在の僕にはそんな「オアシ」もふんだんには無い。ふんだんに金を使って美味いものを食べたいのならば、わざわざ青春18切符なんかで旅はしない。

金を使わなくともその町の良さを知り、その地域の美味いものを楽しむことは出来る筈だ。そんな思いで18切符で出雲までやって来て、その町で過ごす一日はスーパーを巡って出雲の美味いものを探すことに没頭しようと決めたのだ。「美味いもの巡りの旅」を目指したでもないのだけど…。


旅に出れば「とにかくその街の繁華街だったり、ウェブ情報で薦められた店に出かけ、そこで食べたものだけがあたかもこの地方で最高に美味いもの」のように勘違いしてそれを力説する人もいるが、そんな情報に接すると僕はうんざりする。

旅の楽しみは色々あるから、そんな人と僕が考える思いは別のものだし、それも「多様性」として放って置くことが一番なのだろう。僕はそんなことには興味は持たない。

単に金の無い負け惜しみのようにも思えるが、お大尽旅行は年寄りになってからすればいい!って……この先、そんな金持ちになるような公算もないのだけど…。



さて、出雲で「水ダコ」とか「イワシ(これは美味くなかった)」とか「イサキ(これは今でも思い出すくらいの美味さ)」に舌鼓を打ちながら、旅の模様をスマホを利用して友人たちに伝えていた。

これは別項で記したいと思っているのだけど、こうしたぶらり旅をしていると「スマホの有用性」はとても大きい。そんな、スマホの力により、出雲の次には僕は大分を目指そうと思った。

「今、出雲ですが、次の行先は決めていません。」
「大分にもだいぶ近いじゃん?」
「ですね、なら明日は大分に行きましょうか?」

そんなやり取りから、翌日の夕食時までに大分を目指すことが決定された。



さて、ダイヤを調べてみると「朝5時の始発に乗っても」「9時頃の列車に乗っても」出雲を発って大分に到着するのは夜の7時前になることが分かった。

鈍行列車で旅をすると、乗り継ぎが良くなく、途中駅で大きな待ち時間が出来ることが多い。特急を含めた乗り継ぎはそれなりに考慮されているのだけど、鈍行のみを利用する前提では乗り継ぎのスムーズさなど考慮されていない。

途中の乗り継ぎ駅で降りてその町の駅の周辺を散策することは可能だが、この日の目的地にの大分までには特に立ち寄りたいような町もなかったので、9時過ぎの列車ので出雲を発った。


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出雲発のディーゼルカーに乗って一路九州大分を目指す。このディーゼルカーというのが、新幹線とか快速列車に慣れた人には信じられないくらいにノロい、はずだ。加えて、特急列車を優先して駅でやり過ごすために待つのだから、なかなか距離は稼げない。

しかし、こうしたノロノロ列車ならではのいいところもあれば、旅情を盛り上げる要素もそれなりにあるのだ。



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「夏旅」3日目にして初めて見た日本海
「小学生の夏の思い出の絵」に描かれそうな鮮やかな夏の光景。ビュッと通り過ぎてしまう特急に乗っていなくて良かった!ノロノロ鈍行サイコー!なんて思うような車窓からの絶景だ。

夏の日本海を見るのは数年ぶりだった。
列車の中から見えただけの景色だけど、この海の青さは本当に良かった。大分で僕を待つ友との約束がなく、行くあてもなく鈍行列車に乗っていてこの風景を見たのならば、次の駅で降りてこの海に入っていたと思う。実際に海パンも持って来ていたし…。



さて、ここからの大分への移動の模様は端折る。

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青さが目に染みるような日本海を見た後では、どんな車窓からの景色も僕の心を動かさない。

都市部の電車(ディーゼルカーではない!)に乗り換えて、関門海峡をくぐり、大分に着いたのは夜の7時前だった。予定通りである。日本の鉄道は素晴らしい。


数年ぶりとなる大分での旧友との邂逅への期待とともに僕は降り立ったばかりの街をノシノシと歩いた。

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