シナチク作りに挑む

去年の夏前くらいのことだが、その頃の僕は自作の中華蕎麦を人に振る舞うのが好きだった。

これは「今では嫌いになった」という訳ではないのだが、この半年くらいは中華そばを振る舞うことも滅多にない。

その当時、「この中華そばに美味しいシナチクが乗っていたらいいのに…」ということを何度も思っていた。

近くのスーパーでシナチクを探してみるとラーメンのトッピング用に味付けされたものが売られている。それらを見るとクキクキした歯応えの強いものでもなく、単に筍を細長く切って中華風の化学調味料で味付けされただけのもののように見えたので一度も買っていない。

そしてその時から僕はシナチクを自作しようと決めていたのだが、季節は夏の始まり。既に安価な筍も手に入らない状態だった。

そんなことから一年近くの時を経て、筍の季節がいよいよ終盤に差し掛かってきた先週、僕は農協に出掛けて茹で筍を買ってきた。

シナチクの製法は大凡知っていた。
茹でた筍を塩漬けにして発行させる。そしてそいつをカラカラに干してから塩抜きする。それを味付けすれば完成するという塩梅だ。

細かなことをネットで調べてマニュアル熟知人間になってから制作に取り掛かるということは僕は好きではない。前述の製法は以前にネットで知ったものであったがそれ以上の無駄な知識は頭に入れないようにして、まずは塩漬け→発酵に取り掛かった。

そして、一週間が経過した今、僕は筍を干している。

筍を塩漬けにしてから、乳酸発酵を待っている間に僕はネットで幾つかのシナチク作りの記事を見た。すると、超我流で挑んでみたシナチク作りにいろいろと誤りがあることを知った。

■シナチクは筍ではなく竹を食べるもの
■竹は繊維もアクもひどく強く食べられないが、乳酸発酵させることでその両者が食用に改善される。

大きく言うと僕の誤りはこの2点だった。

ネットの記事には、単に筍を味付けしただけのものをメンマと称して喜んでいる馬鹿も大勢いた。これはアミノ酸調味液と着色料に浸して、香料で香りを付けた茄子や胡瓜を柴漬として食べる愚行と何ら変わりない。

シナチクというものは発酵食品の干物を水で戻して丹念に塩抜きをして調味した食品のことを言う。

そんな訳で、僕はこの初夏〜秋にかけてモノホンのシナチク作りに挑むことを決めた。

作りかけた「筍によるシナチクもどき」も勿体無いので最後まで作るけど…。