左肩四十郎

黒澤映画に出てくる三船敏郎のカッコ良さに痺れあげたのは、22歳くらいのことだと思う。

当時、同世代で三船敏郎のカッコ良さを語る友達は僅かしかいなかったが(勿論、今でもいないのだけど…)、とにかく痺れた。

そんな彼が劇中で「まもなく四十郎ですが…」とボソッと言うシーンを観て、こんな重厚なカッコ良さを持つ三十代後半になりたいと思っていた僕も既に四十代後半だ。

今年の春先から左肩に違和感を感じるようになっていた。これを四十肩と呼ぶのか五十肩と呼ぶのか調べていないけど、そこから半年放っておいたらいよいよ肩が上がらなくなってきた。痛いのだ。

この痛みは最初は腕を大きく回す時にくらいしか感じなかったのだけど、夏あたりからは左肩を下にして寝ていても痛くなり、そのうちに何もしなくても肩から腕の付け根全体くらいが痛むようになってきた。

痛みを感じるようになると無意識のうちにも肩を庇うようになっていたようで、気が付くと僕は左肩をほとんど機能させないような生活を送るようになっていた。

秋になり、ジャケットを着るようになってその不便さが生活に支障をきたすレベルになっていたことが明確になった。ジャケットに手を通すのが一苦労なのだ。

少し前に職場で年齢の近い同僚に「四十肩」のことを聞いたら「それは我慢して肩を動かしまくらないと良くなりませんよ」とのことだった。それまでは痛いのならばそっとしておいた方がいいのだろう…なんて思っていたのだが、それは全くの間違えだった。

以来、意識的に肩を回すようにしているし、左手をなるべく高くに上げるようにはしているが、人間の体なんてものは本能的に痛みを回避するように出来ているのだから、なかなか腕を上げることが出来ない。

寒さが深まってきてジャケットやらコートやら、冬の装いを楽しむ頃までには平気でジャケットの袖を通せるようにリハビリを進めたい。