福袋という売方

数日前のことだが、ネットの記事で「福袋」についての記載をよく見た。

元来、福袋なんて年末商戦を含めて売れ残ったものを処分するため、そして初売の際の極めて博打性の高いものだけど当たれば高額なものが入っている客寄せアイテムとして売られていた。

僕はこれまでに一度か二度は買ったこともあるように思うが、何をどこで買ったのかも思い出されないので実際にそんなものなど買ったこともないのかも知れない。

中にどんな感じのものが入っているか凡そ分かって、なおかつそれがそもそも欲しいものであればそいつはまさに「福」である。20年くらい前に僕は「とあるアメカジショップ」で革ジャンなどが入った福袋を見た。中に何が何点入っているのか分かるのだから「福袋」という名を借りた「単なる新年の抱き合わせ商品セールス」に過ぎないのだけど、革ジャンが普段の値段の半額以下とかだったと思うので、その安さに僕は惹かれた。

結局、それを買うことはなかったのだけど、正しい判断をしたと思う。これは福袋に限らないのだけど、貧乏性の僕は大して必要でないものであってもそれが半額になっていたりすると「コレを含めて買っておかないと損する」なんて気持ちになってしまうのだ。

これは衣類だけでなく、夕方のスーパーの半額セールなどではつい必要ないものを買ってしまう。それが本当に欲しかったものならいいのだけど、そんなに欲しくなかったとしても「これを買うと得する」みたいに思ってしまう。しかし、そもそもその品はそれなりに人気のないものであり、買い手がいないから売り手も処分価格にした「半額の価値にふさわしいもの」なのだ。値段がいくらだったとしても、必要のないものなんて本来は無価値なのだ。

 

ここで、現在の福袋に話を戻す。ネット記事で見かける福袋はファストフードとかチェーン飲食店のものが多い。そして、それらは3,000円出せば3,000円分の商品券と幾分かのノベルティ商品みたいなのがついているものだ。3,000円のものを買うと運が良ければ10,000円分入っているということはないようだ。ここには夢も無ければ福もない。

中にはノベルティグッズが欲しいからという言う人もいるだろうが、大抵のノベルティグッズというものは本来は販売促進用にタダでオマケで付けるものだ。このオマケで人を釣り上げてモノを売りつけるというのが儲けたい売手の手口だ。

これが「福袋という売方」においてはタダでオマケしなくても、バカな消費者(というか消費者の中に結構な割合でいるバカども)がお金を出して買ってくれるのだ!それも数千円分の商品券も買ってくれるのだ。これは売手にとってはノーベル賞級に嬉しい商法である。

まず、前述の通り「これまではタダだったノベルティ」で数千円の商品券が売れるのだ。その瞬間に売上を建てられるのだ。この商品券が使われなければ、売手は商品を供給することなくまるまる儲けを出すことが出来る。全額使い切れ無ければ余った分も売手の儲けなのだ。むしろ、商品券のことを忘れてくれて、そのまま未利用の紙屑になってくれることを売手は望んでいる。

そして、今3,000円の商品券を買わせておいて、来月には値上げをする。普段、食品が値上げされると消費者の足は遠のく。しかし、既に商品券を買ってしまった消費者はそれを使わないのも勿体無いから利用を控えたりしない。福袋商法は「客に怪しまれることなく、そいつが逃げ出さないように足枷を付ける」ことが出来るのだ。むしろ、値上げによりその商品券が使われなければ、売手は更に儲けることが出来る。

 

世の中の人たちは数千円分のファストフードの商品券を本当に欲しいのだろうか?運が良ければ購入額よりも高額な商品券が手に入るわけでもなく、単に販売店だけが儲かる商品を「福袋」という宣伝コピーに踊らされて買わされていることに気付いていないのだろう。そして、そんな仕組みで買わされた商品券で美味くもないものを美味そうに食べるバカな家族連れが街に溢れるのだろう。