山葵という食物を好きだと言うことは、このブログにも何度となく記しているように思う。
刺身に山葵を添えられないくらいなら、そのタイミングで刺身を食べたいとは思わないし、春の限られた一時に出回る柔らかな山葵の花や茎を漬け込んだ山葵漬の美味さは「季節の食物としてはナンバーワン」ではないかと思うくらいに、僕は山葵を好きだ。
ここ数日、酒粕と一緒に漬け込んだ山葵を食べている。例年、12月の中旬くらいに漬けて正月の食卓を彩る一品なのだが、昨年の12月はジャズバンドにかまけていたので、今年の正月の食卓には山葵は登場しなかった。
1月の中旬にスーパーの八百屋で見切り品をぶっしょくしていたら、ボキボキとした山葵の茎が安価に売られていたのでそいつらを買ってきて酒粕とともに漬け込んでおいた。
特に食べたかった訳でもないのだが、随分と安くに売られている山葵の茎を僕が買わなければそいつらは廃棄されるような気になり、とにかく安いことにも惹かれて貧乏性丸出しで買ってきた山葵だ。
少しの離れた下町商店街でたまたま目にして買っていた酒粕と混ぜ込んで辛味が出るのを待つのだけど、この酒粕が随分と美味いものだった。そんな酒粕の力を存分に借りて、そして仕上げには正月に親類から貰っていた塩数の子も一緒に和えたものを食べている。
シャキシャキとした山葵の茎とボリボリとした数の子の歯応えと旨味、そしてそれらを纏めて繋ぎ合わせる酒粕の美味さ。三位一体となった山葵漬は「大した意欲もなくたまたま作ったもの」だったのに、とても美味しいものだった。