雨の中

ゴールデンウィーク最終日のことだ。もう、一週間前のことになる。

行楽日和の続いた今年のゴールデンウィークも最終日の前夜から雨が降り始めた。これはずっと前から天気予報で言われていたことだったし、予報とピタリなので特に驚くことでもなかったのだけど、長い休暇の最終日の天気が良くないというのは気持ちのイイものではない。

なにか悔いの残るような長期休暇でもなかったのだから、満足して翌日からの「これまでと同じ日常」を迎えればいいのだけど、この日はちょっと寂しくなるようなことがあった。

長女が高校の時の部活の集まりがあるそうで、最終日だけ帰省しようとしていた。前日も夜までバイトがあるので日帰りでやって来ようとしていたが、目が覚めるととっくに約束の時間には間に合わないタイミングになっていて、帰省は諦めたとのこと…。

ならば、と部活の集まりの際にテレビ電話を繋いでもらって皆に顔を見せようと思っていたのだが、その時間にも昼寝していて仲間たちからの着信にすら気が付かなかった…という体たらく。

僅かな時間であっても娘と会えなかったことは残念ではあるが、それ以上にダメ大学生の典型である「眠って約束を反故にする」ということを大学入学から一ヶ月でバリバリに実行している娘が心配になり、彼女を窘めておいた。

ダラけ選手権みたいなものがあれば都道府県代表くらいには選出されるほどダラけていた僕が娘を窘めるのもおかしなような気もするが、そんな怠惰な生活習慣を改めるのに苦労した僕だからこそ我がこととして後悔し、叱れることもあるのだ。

 

さて、そんなことが日中にあったのだが、昼からはダブルヘッダーでバンドの練習に行っていた。

夕方からのバンドの練習前、だいたい薄暗くなってきた18時過ぎ頃だが、僕はコンビニに出掛けてパンと莨を買った。

2つ目のバンドの練習は21時頃まである予定で、帰宅するのは22時頃になるので早い晩飯というかオヤツとしてパンを買い、コンビニから練習場に戻る道すがらパンを食べながら歩く…という「買い食い中学生」みたいなことをしていた。

昼から既に降っていた雨は夕方になると少し強くなっていて、少し強く雨の降る中を僕はパンを片手にそいつをモグモグしながら、もう片手には傘を差して歩いていたのだ。

練習場に着き、パンを食べ終え、練習に取り掛かろうとした僕は買ったはずの莨が少ないことに気が付いた。4箱買ったのに2箱しか見当たらない。ショルダーバッグの口も全開になっていたので、そこから莨が落ちたことは明白だった。

薄暗く雨の降る田舎の道を、どこかに落ちているであろう莨を探しながら歩くおっさん。こうして落とし物を捜しながら道を歩くなんて何年ぶりのことだろう?何年どころではないよな…なんてことを思いながら、小学生の頃、お使いかなにかのお金を落として親に叱られて、歩いた道を辿って探しながらウロウロしていたことがあったのを思い出した。

娘を叱る親としての自分。そんな自分も今日は叱られてこそいないが、40年くらい前に叱られたことと同じ様なミスをしてウロウロしている。

連休最後の日だということ、そして多少冷たい雨が降っていること。そんなことと相まってなのか、なんだか寂しく落とし物を探す夜だった。