昨夜、僕はカレーライスを食べた。
幼い頃からカレーライスのことを嫌いだった時期などないのだが、年をとるにつれ、その「カレー愛」は年々高まる一方であり、なんなら毎日カレーライスを食べてもいいよ…なんて気持ちでいたりもする。
日本という(今は貧乏国に成り下がったことが問題とされる国であっても…)食文化に恵まれた国に育ち、今の僕は幸いにも、日々の食事を自分の好みで選ぶことの出来る境遇に過ごせているので、カレーの他にも色々と食べたいものもある。
これは人の好みによるものなのだが、僕はカレーライスで酒を飲むのは好きではない、全く…。カレーライスに限らず、そもそも御飯粒と酒とは合わないものだと思っているのだから、僕の食卓に於いて「カレーライスと酒が同居すること」は滅多にないのだけど「どちらかが世の中からなくなるのだが、どっちを無くす?」という選択をするならば、僕は酒がこの世に残ることを選ぶ。
そんな訳で、「毎日カレーライスでもいいよ…と僕が答えること」は実際にはないのだが、年をとっていき色々なカレーに触れてくるとその奥深さも知ることになり、特に「自炊カレーの趣味性」の妙を知ってしまうと本当にカレーを好きになる。
「食べたいものがカレーやらハンバーグって…。お前はガキか!?」みたいなことは、僕もこの人生で何度も人に放ったことのある失礼な台詞なのだが、今の僕はガキの頃よりもカレーを好きでいる自信がある、まあ自己比率なのですが…。
昨夜、食べたカレーは写真を載せたとおり二種。僕にとっては贅沢な食事だ。
このうちの一つが「デリーのカシミールカレー」であり、これは先月沼津に華々しくオープンした成城石井で買ってきたものだ。
デリーのカシミールカレーを初めて食べたのは、もう20年くらい昔のことだろうか。シャバシャバなスープ状で強烈な辛さのそれを初めて食べた時にはそれほど好きにならなかった。その当時の僕の職場は銀座にあったので、デリーに限らず日本を代表するようなカレーの名店にも色々と接することが出来た。
その後、銀座を離れてからもやはり銀座という街が好きで時折足を運ぶこともあるのだが、そんな時には歌舞伎座の近くの名店のカレーを食べたくなることが多く、デリーのカレーを食べることは滅多になかった。
そんなデリーのカシミールカレーがレトルト状態で売られていることは随分昔から知っていたし、過去にはそれを買ったこともある。しかし、それも10年以上前のことであり、沼津に成城石井が出来てからは「近いうちにそれを買って帰って食べよう」と一月前から思っていたのだった。
ご存知の方も多いだろうと思うが、レトルトのカシミールカレーはシャバシャバのカレーソースだけが入っている。そもそも、そのソースのパンチ力と奥に秘められた旨味を楽しむカレーなので「それが本筋」なのだろうけど、僕は具材としてのチキンも楽しみたかった。
レトルトのカレーに添えられた説明書きには「お好みの炒めた肉等を入れ…」と記されているのだが、同時に「風味が損なわれるから煮込んではいかんよ…」という意のことも記されている。
炒めた程度の肉を加えたところで、このカシミールカレーの旨味の一員となりつつ、尚且つカレーの具材としての肉の本分となり得ないことは僕は知っていた。
これを理解していた僕は、実は先週末からカシミールカレーに加えるために鶏もも肉を調理していた。個性の塊のようなカシミールカレーに加えても、あたかも「僕は元々ここにいましたよ…」と平然と嘘をついて、その社会に潜り込めるスパイとか諜報員のようなやつ…。
数日かけて僕がスパイとしての充分な教育を施した鶏肉は、そこに属した新参者ならばすぐにバレてしまうような「過酷で排他的なカシミール社会」にスッと潜り込めるレベルに仕上がった。
こうして昨夜は二種のカレーをライスとともに楽しんだのだが、本当に美味しかった。黒褐色のモノホンのカシミールは言わずもがな。そこに適するように仕立てた「僕による嘘もんカシミールチキン」も、色こそ違えど「カシミールの遠縁の一人(4親等以内)」といえば通用するのではないか?というほどの美味しさだった。
最終的には「カシミール向けに仕立てられた嘘もん」とモノホンをブレンドして食べる…という当初の目的を達成させたのだけど、僕の作った「嘘もん」もモノホンレトルトの高価さを鑑みると「こいつの方が凄いんじゃね?」と思うほどの出来栄えだった(完全に手前味噌…)。
さて、つらつらと僕のカレー生活について書いてみたのだが、ここからが大切なこと。
昨夜、カレーを楽しみ始めてから僕の頭皮は信じられない量の汗を掻いていた。食べ終えた時には本当に頭からバケツの水をかぶったのではないかというくらい!勿論、食べ終えてすぐに汗が止まるわけなどなく、頭や髪をタオルで拭いてもその直後には滴るほどの汗が出てくる有様…。
その昔、まだ昼食の選択肢に銀座のデリーがあった頃、僕はデリーに向かって歩いているだけで汗を掻き始めていた。店に着いて「カシミールの入ったランチセット」やら「ドライカレーの大盛り」を注文することには、既にハンカチはヒタヒタな状態だった…。
デリーのカレーには信じられないほどの発汗作用がある。そしてそれはカレーを食べずとも「デリーのカレーという言葉」だけで、僕に汗を掻かせるほどのパワーを持つ。
昨夜、カレー食べてから、夕方に風呂に浸かったというのに汗の掻き方が尋常では無かったので食後も風呂に入ってシャンプーしたほどだ。
そして今朝、残っていたカレーを沸かさないように温めて食べたのだが、僕の頭皮やら髪の毛は朝からヒタヒタになった…。なので、朝も風呂場でシャンプーすることになった。
デリーのカシミールカレー、そしてそれをオマージュした僕の「嘘もんチキンカレー」。それらの美味さは凄かった。美味しかった。しかし「凄さ」として特筆すべきことは「その発汗作用」である。
先程から僕は何度「カシミールカレー」とか「デリー」という言葉をここに書いただろうか?
こうしたパワーワードに接しながら、僕の頭皮は勿論のこと、額や鼻からもとうに多量の汗を掻いている。もうヒタヒタ…。