数日前のことだが、夕食に八宝菜を作って食べた。
買っていた豚肉と木耳が古くなったこと。そして、白菜とピーマンが冷蔵庫にあったこと。この2点が八宝菜を作ることになった要因だ。
八宝菜という献立は一人では滅多に作らないのだが、子供たちと一緒に食事する時にはよく食べていた。今はどの子も近所にいなく、会うことも多くないから会って一緒に食事すれば必然的に御馳走になる(僕の価値観における「御馳走」なのだけど…)。
八宝菜も御馳走ではあるのだが、刺身や天麩羅と比べると僕の食事カーストの中では見劣りする立場であり、最近は作ることもなかった。
ただ、この日は「前述の材料都合」があって八宝菜を作ることにしたのだが、豚肉、烏賊、木耳、ピーマン、玉葱、青葱、白菜…と冷蔵庫のものをほぼ総動員したが「七宝菜」にしかならなかったた。
…と、調理をしていると不思議なことに気が付いた。何らかの魚介が加わった方が美味しいだろう…ということで、この日の職場からの帰り道にスーパーで烏賊を買おうとしたのだが、生のものは売られておらず、仕方なく冷凍のカットされた烏賊を買っていたのだった。
何気なくパッケージに目をやると「いか加工品」と記されていた。一度はそのまま見過ごしたのだが「………加工品?間違えて冷凍のイカフライでも買ってきたか!?」と思い、パッケージも品物もよく見たが、僕が買ってきたものは烏賊の切身であり書かれているのも「いか加工品」で間違いがなかった…。
原材料を見るとアミノ酸調理料などが烏賊に加えられていたものであることが分かった。
なんということはない冷凍の烏賊を素材として買ったつもりなのに、そこには化学的な味付けがなされていたのだ。昔、長男とデパートの魚売り場で売られている魚介類をチェックしたことがあるのだが、その時にバーベキュー用の大振りの烏賊の切身に「チキンエキス」が加えられていたのを見つけたことがある。
この時、長男が「この烏賊はとても美味そうだけど、僕たちは烏賊を美味い美味いって食べてたら、その味はチキンエキスのものだったりするんだね…。もう、なんの美味さなのか分からなくなるね…。」と言っていたことがとても面白かった。
「そんな馬鹿なものは食べなきゃいいし、俺ならまず買うことはないな…」なんて当時の長男には偉そうに話したりしてきたのだが、この日の僕はしっかりとそんな感じのものを買っていた…。
これは恐ろしいことだ。近所のスーパーで売られている唯一の烏賊が「単純な烏賊」ではなく「調味料漬けのいか加工品」なのだ。普通の切身のような風体で売場に潜み、素知らぬ顔をして人の食卓に侵入してきていたことが気持ち悪かった。
まあ、和食っぽいものには粉末の鰹出汁やら昆布出汁、中華には鶏ガラスープの素(粉末)、洋食らしきものにはコンソメスープの素という工業製品を、あたかも塩で味付けするかのように用いる人もいるから、そうした人たちにとっては「どうせ後から加えるアミノ酸調味料が最初から入っていて便利」なものなのかも知れない。
しかし、僕にとっては必要のない余計な加工だし、それがパッケージにデカデカと「調味料加工のいか」と書かれていないのが気に食わなかった。
変わりのない日常だと思っていたら、そこでは既に侵略者による乗り替わりが始まっていた……これは「ウルトラセブン」で見たことがあるようテーマだ!
何か同じようなタイトルもあるかも知れない…と思って「ウルトラセブン」のタイトルを調べてみたが、この状況にピタリと合致するものはなかった。
今回の烏賊はパッケージにはその素性が記されているものの、気が付かない人は多いだろう。素材として形もあるものだから「姿なき挑戦者」ではないのだが、こうして「人に気付かれないうちに食卓に入り込む嘘もん食品」も沢山あるのだろう…。
…って言いながら、嘘もん食品の烏賊は八宝菜にして普通に食べた。そりゃ捨てるのは勿体ないからね…。