今週は肉の燻製を作っていた。
「作る」と言うほど手間のかかるのでもなく、僕が特に世話をする訳でもないうちにインスタントの燻煙剤(バルサンみたいなのではない、燻製チップのお線香のようなもの)が仕上げてくれるお手軽燻製だ。
ソーセージやらベーコンという加工食品は美味しいと思うが、市販のものは肉の旨さどころではない嘘もんの美味しさに溢れているので滅多に買わない。旨味があることは結構なことなのだが、異様なまでの嘘っぽい旨味を加えられたものは既に肉ではない「工業製品」だと僕は捉えている。
この夏に辛子を轢き潰してマスタードを作った時にはソーセージと一緒に食べたくなったのでスーパーで見てみたのだけど、何やらゴテゴテと沢山の添加物が加えられている様子を見ると全く欲しくなくなった。塩と豚肉で作られた全うなものも本当に一種類だけ売られていたが、それは驚く程高価だったので、豚の塊肉を買って帰ってローストポークにして辛子を添えて食べた。
今回はマスタードを食べたくて燻製を作った訳ではない。暑さも落ち着いてきて涼しくなってくると燻製のことを思い出す…という僕の習性によるものだ。
今回もベランダでのインスタント燻製なので大した道具も使わない。沼津に越してきてから作った段ボール燻製器が割と性能がいいので、それを使いまわしている。
近くのスーパーで半額で売られていた豚肉を塩漬けにして数日寝かせ、それらを燻煙剤という一緒に段ボール燻製器に入れて放置しておくだけ。
燻煙剤の量も多くはないので、一晩では燻されない。翌日も燻煙剤を加えて放っておく。
燻製というものは食材に煙をあてて作るものだが、効率よく煙を利用しようと思うと「燻煙器から煙が逃げないように」密閉したい。すると燻煙器の中は煙で溢れるものだから、効率よく煙が回るのだけど、煙が充満しすぎると燻煙剤の火が消えていたりする。
二晩目は割とすぐに燻煙剤が消えていたようで、翌朝段ボールを開くと特に燻された様子もない肉たちがそこにいた。
火の消えた燻煙剤に着火して再度燻したら完成。
…と言っても、「燻す作業が終わった」と言うだけで、食べるのはまだ先のこと。煙臭さが落ち着いてきて、香りと塩気が馴染んできてから食べるので、燻した肉はラップにくるんで冷蔵庫に入れて放っておく。
仕込んでから食べられるようになるまでに時間は要すが、その手間は大した事ない。ちょっとの作業であとは時間の経過が肉を熟成させてくれる。これは漬物を漬けることとよく似ているように思う。
確かに漬物についても市販のものは「発酵を促すための漬け込み」ではなくて「アミノ酸調味料への漬け込み」を行っているものが大半だし、市販のソーセージやベーコンも煙に燻されることなどなく、燻製の香りがするフレーバーと化学調味料に漬け込んだものが多いから、両者とも食品というよりも工業製品みたいなものである…ということに気がついた。
面白い発見だと思ったが、こうした工業製品の味こそが漬物の味であり、不思議な旨味の加えられたものこそがベーコンやソーセージの旨さだと思っている人ばかりなのだろう。これは気持ちの悪いことだと思う。