「春分の日」を境に急に気温が上がり、全国的に見れば春の装いでは暑いくらいの場所もある。
「春がなくなった」「秋がなくなった」と騒ぐ人には「お前の感性が鈍いだけだ」と同意したくないのだけど、気持ちはよく分かる。ついこの間まで真冬のように寒かったから。
さて、この間の土日は客を迎えて我が家で酒と料理を振る舞っていた。
先週には職場の派遣社員を解雇し、補充の人が派遣会社から2週間の契約でやって来たのだが、75歳くらいの高齢の方でパソコンも扱えず、やって来たその日に本人から「即日辞退」となった。この為、職場も何やかやとバタバタしている。そして、その合間に数は多くないけど春の人事異動に伴う送別会もあったりする。そんな訳で「なんだか余裕もなく落ち着かない状態」での来客対応となった。
土曜日の午前中はゆっくりと風呂に浸かり、昼過ぎから食材の買い物に出掛けた。九州に住む先輩がこの数年、東京に単身赴任していたが、この春の人事異動で九州に帰る。そうなると会える機会も減るだろうからということで沼津での送別会開催となったのだ。
この日の献立を記しておく。
漬物(白菜、水掛け菜)、平目の刺身、アスパラガスの酢味噌和え、南鮪と芽葱と海苔、蕪の炒め物、鶏レバーのオイル煮、砂肝の唐揚げとバター焼き。こんなところだ。
夕刻から飲み始めた酒は、瓶ビール(赤星)、土佐鶴、ウイスキーのソーダ割、スパークリングワインと大チャンポン大会となり、途中で横浜からの追加客人も加わっての大騒ぎとなった。
深夜3時くらいまで遊んでいたので翌朝は9時過ぎにのそのそと起き上がり、初夏のような陽気の沼津を散歩して、昼から先輩と再び飲んだ。
主賓となる先輩は酷い宿酔いで、散歩しているうちは全く酒など口に入らん…という有様だったが、小一時間歩いて帰宅して、色々となだめすかしたり鼓舞しているといつの間にか楽しい宴会が始められていた…という具合。
前夜の残りや料理しなかった蛤を酒蒸しにしたり、普通の宴会をもう一度開いた塩梅だった。
土曜日の夕方から日曜日の夕方までのおよそ24時間。沼津にやって来た先輩との楽しい酒飲み時間だった。この先会えるのはいつになるだろうか?
ギターを掻き鳴らし、大声で笑い、石立鉄男のドラマを見て、懐メロを聴きながら酒を飲む。井上順の「お世話になりました」も何度も再生する宴会だった。
日曜日の夕方前に東京に戻る先輩を沼津駅まで送って行ったら「世話になったねえ」と声をかけられた。そして土産も持たずに来て済まない…というようなことも言われた。
確かに世話はした。そして土産ももらわなかった。しかし、ギャハギャハと過ごした時間はあまりに楽し過ぎた。そんなイイ時間を過ごしたのだから、僕による世話とか土産などどうでもいいことだった。
見送りの駅からの帰り道、僕の頭の中には「お世話になりました」の歌が鳴り続けていた。そして、先輩からの「世話になったねえ」とポツリした言葉がそこに絡んだ。暖かな…ともすると暑いくらいの春の午後だったが、僕はなんだかとても淋しい気持ちになった。