若い頃は「濃いめ、硬め、多めこそが正義」とばかりに思っていたので、すっきりとした古典的な醤油ラーメンには惹かれませんでしたが、この数年そんなラーメンに美味しさを感じます。
このことは間違いなく私自身の加齢による味覚の変化なのですが、胃腸と食欲の劣化であることに反して、味覚は研ぎ澄まされていっている…と都合よく捉えることにしています。
そうした現在の私のラーメンへの趣向を満たしてくれるのが春来軒です。沼津のほどほど郊外にあるこちらの店は昼時には5台程度の駐車場もすぐにいっぱいになり、「運良く駐車場が空いていれば食べられる店」という変則的な人気店です。
人気店であることは揺るぎませんが、いつも満車の駐車場から店内に入ってみると満席だったことはありません。客席と駐車スペースのアンバランスさ…というか駐車場の狭さそのものが生み出す「入店困難さ」がこの店のプレミア厶感を醸成しています。
さて、ラーメンは「普通に美味いもの」です。香り高いすっきりとしたスープとシコシコとした細い麺。そこまで削ぎ落とされてはいないけど「引き算の美学」に属する食品です。とにかく余計な味がしないところが美味いのだ…と感じているので、クドいのが好きな人には物足りないでしょう。
そして、こうした味こそ文章での説明が難しく、説明の文を重ねるごとに「その味わいと同様に多くを加えないほうがいい」としか思えなくなる美味しさです。まさに「百聞は一見にしかず」というものなので、明日、友人を連れて来店するつもりでいます。