若い頃に本当に一時だけど「喋ることを仕事にしている時」があった。もう25年も昔のことだ。
厳密に言えば、結局「僕の喋り」は仕事としてその対価を頂けるものにもならず、その後はだいたい営業職としてサラリーマン生活を送っている…。
さて、そんな前置きは一旦置いておいて、その数日の僕は「早口言葉の練習」をしている。ネットで見かけた動画の早口言葉の歌が耳に残ったからだ。
「早口言葉のうた」といえば、「8時だょ!全員集合」でやっていたものが僕の原体験にある。当時、幼稚園児だった僕は勿論のこと、その時代の小学生とかとにかくガキだった人の殆どが夢中になったはずだと思う。
そして、中学生の頃には「ザ・ドリフターズ」のベストアルバムを買い、早口言葉というよりもそのバックトラックのソウルフルなリフを聴きまったりしていた。今だに「コンガがカッコいい曲」と言えば、マイアミ・サウンド・マシーンではなくて、大昔によく聴いた「早口言葉のアレ」ではないかと思う。
…と、今回ここでいう「早口言葉のうた」はドリフのものでない。娘と同世代くらいの若い女の子たちがバンドでカバーしているものだ。初めて聴く曲だったので調べてみると、原曲はもう5年以上前に作られた曲で、彼女らの演奏は原曲のほぼ完コピ作品だった。
学生くらいに見える若い子のバンドなのに味のあるリフを演奏するな…と思っていたら、バンドのリフもフィルもほぼ原曲のコピーだった。
さて、ボーカルの女の子がサラリと歌っている歌詞を知りたくてネットで検索して、更にはそれをプリントアウトして自宅でネット動画とともに歌ってみたら全く歌えないことに驚いた。
元から「カエルピョコピョコ…」が苦手なことは分かってはいたのだが、全く歌えない…というか発音すら出来ないし、これを全国偏差値に換算するなら偏差値40くらいではないのか!?というダメっぷりだった…。
そして、僕の滑舌体たらくはカエルピョコピョコに限らず、殆どの早口言葉フレーズにおいて随分と酷いものだった。
若い頃の本当に僅かな期間とはいえ滑舌らや発声の練習をしてきたこともあるので「僕は人並み以上に発声出来る」と思い込んでいたのだが、それがとても虚しい思い込みに過ぎないことを認めざるを得ない有様だった。
そんな訳で、仕事の移動の社用車の車中や帰宅してから酒を飲む時とか熱い風呂に浸かっている時など、なにか時間があればカエルピョコピョコを口にしている。
数日の練習の成果はまだ全く出ていない。「カエルピョコピョコ」「みピョコピョコ」とフレーズをブツ切れにして発声すればたまにちゃんと言えることもあるが、大抵は「カエルピョコポコ、ムピョキョキョポ」なんて感じ…。
おっさんが早口言葉を出来るようになったからといって何か称賛される機会などがある訳でもないが、なぜだかこの早口言葉だけは出来るようになりたいという気持ちになっている。
動画の最後では「噛まずに歌いきったボーカルの女の子」が「イケたー!」と喜んでいる。この姿を我が子の成長を見守る父親かのように微笑ましく思ったりもしたが、そんな温かな気持ち以上に悔しく感じたし、何よりも羨ましかった。
歌詞のとおり「コツコツやり続ければ カチコチの口も 動き出すはずだ」なので、もうしばらく続けてみようと思っている。