今週に入ってから梅雨とは思えぬような天気が続いている。
天気予報では「梅雨前線が消えた」なんてことを言っているが、これで梅雨明けしたら水不足で大変なことになるのだろう。何かの野菜はまためちゃくちゃ値上がりしたりして…。って、来週からは雨が再開するので梅雨はまだ続くのだけど、よく晴れた日なので昼から半休を取ることにした。
今年の5月は本当に気持ちのいい天気というのがなかった。平日に爽やかな初夏らしい日もあったのかも知れないが、休日は本当に雨の日が多く、僕としては「初夏の爽やかな日射し」を体験しない年となった。
この数日の日射しや暑さは既に初夏のものではなく、夏の盛りのようなものなのだが、朝、出社する時に浴びる夏らしい日射しが気持ち良かったので「よし、今日は午前中に仕事を片付けて午後からは半休にしよう。幸い、午後からはアポも入っていないし…」と出社途中に休みを取ることを決めた。
昼から休みにして陽の光をたっぷりと浴びて過ごそうと決めたら気分も軽やかになり、軽快な足取りで会社近くまできたら「タイピンを付けていなかったこと」に気が付いた。ネクタイをする時にタイピンを付けないのは、ズボンにベルトをしないのと同様だと考えているから、自分でもタイピンを付け忘れるなんて、不思議に思うことだった。
軽く不思議に思いながらも出社して、この日の仕事に従事したのだが、この日は案件成約の連絡なども朝から舞い込み、バタバタと仕事をしていたので、それらをこなして帰宅出来るようになったのはのは14時過ぎだった。そこからいそいそと自宅まで歩いたところで「ウチに着いてもタイピンがない」ことに気が付いた…。
やはり、僕がタイピンを付け忘れることなどなかったのだ…。会社までの道程の90%くらい来たところで「タイピンをしていない」と気付いたのだから、その道程で気が付かないうちに落としてしまったのだろう…。
タイピンというものの固定能力は実に脆弱で、これまで何度も「落としたり引っ掛けたりして無くしそうになったこと」があった。沼津は風が強いのだが、ネクタイが強い風になびく時に一緒にネクタイにくっついてフラフラ揺られていたり、パスカードなどを首から下げているとその紐にくっついてブラブラしていたり…。
そんな危険な目に合うことが度々あったから「無くしても惜しくないタイピンを買おう」と考えることが何度もあった。
僕が常用しているタイピンはもう16年くらい使っているもので人から貰ったものだ。過去には何本かタイピンを持っていたが、前述の通り「結構簡単になくなるもの」だから、そんなものもとっくに無くしていた。この16年間はこの1本だけを使い続けていたのではないかと思う。
そんな愛着のあるものだったので、同じようなものが欲しいと銀座のバーニーズで探したとこもあるが、その時にはバーニーズにはタイピンが置かれていなかった。貰いもののソレは「バーニーズの包紙」だったと記憶していたが…。
…という訳で、帰宅した僕はすぐに通勤路を引き返して「落としたであろうタイピン」を探した。朝の記憶を呼び戻し、道路のどのへんを歩いていたか?それに倣って何かキラリとしたものが落ちていないか探した。
10分もかからない通勤路なので、何も見つからないままあっという間に会社付近に到着して、復路も下を向いて歩いたが、僕のタイピンは見つからなかった。
その後、僕は河川敷に出掛けた。
タイピンをなくした悔しさがあったが、そればかり考えて悔しさを募らせても、どうせタイピンが戻ってくる訳でもないので夏の陽射しを楽しむことに決めたのだ。
河川敷に寝そべり、夏の陽射しを浴びながら文庫本を読む。熱い陽を浴びていると、ちょっとした風でも随分と心地よいものに感じる。この感覚は去年の夏以来、1年ぶりだった。前の夏からはもう1年になるのか…。
当たり前のことだし、その間には秋も冬も春も楽しんだ。しかし、あまりに久しぶりの感覚だったので、自分でも初夏をすっ飛ばして真夏のような気候に接していることに驚く夕方だった。