季節毎の食材を用いた食生活を楽しみたいと思っているが、実際に接することの出来る季節感に溢れた食材というものも「生活範囲のスーパーの充実具合」によって大きく変わる。
現在、僕の住む生活範囲では目を引かれる(心が惹かれる)食材というものもになかなか出会わない。
「スーパーの充実具合」で大きく左右されるのはやはり魚介類であろう。季節毎に旬が変わり、時期による味を楽しみ易いものは魚介類だと思うのだけど「並べられているものを見てビビッときて、堪らなくなって買って帰って食べる」という経験は、残念ながら沼津では滅多にない…。
そんな流通事情下にありながら、それでも手に入れやすい食材が青豆である。「青豆」といってもグリーンピースのことだけではない。
僕の青豆シーズンは4月あたりから9月くらいで、その間にはグリーンピース、空豆、青い枝豆、茶豆、そんなものにインゲンや絹莢、シーズンは関係ないのかも知れないけどスナップエンドウなどを喜んで食べる。
少し前までは、空豆の塩茹でを度々食べていたのだが、そろそろ空豆も見かけなくなった。そろそろ枝豆に舌鼓を打つ時期がやって来るのだ。
昨夜は枝豆を湯掻いて食べた。夏の盛り(というか名残り)の時期に食べる茶豆も美味いが、青さ全開の茶豆ではない枝豆も美味しい。
昨夜食べたのは沼津から近い三島とか函南という箱根の西側の土地で採れたもので、これは茶豆のような成熟した穀物のような美味しさではなく、みずみずしく青臭い美味さがあるものだ。
「箱根」という場所は神奈川県なのだけど、その西側にある静岡県東部の農協が「箱根枝豆」なんていうレッテルで枝豆を売るのもどうか?と思うが、世の中には「東シナ海で採ってきた魚を加工地やら水揚げ市場の名をつけて売り出している例」も多くあるから、大目に見よう。三島とか函南という地域が「箱根山麓の西側」にあることは事実ではあるのだから…。
さて、買ってきた枝豆は塩味(しおあじ)が入りやすいように両側を鋏で切る。こうすることで豆のビタミンが水に流れ出てしまう…ということを聞いたこともあるが、僕は栄養補給のためよりも「美味しいものを食べるため」に枝豆を茹でるのだから、塩味が入りやすいことを優先する。
塩味のことを「えんみ」と呼ぶバカタレがいるが、僕はその表現が嫌いなので身近な若者(に限らず、友人など)が「えんみが効いていて美味しい」なんてことを言っていたら「しおっけっていい直せ」と指摘するようにしている。
身近な人間が「えんみ」と喋るシチュエーションというのも、僕が実際に一緒にメシを食べている時のことなのだから「その場の食材の味付けの感想をちゃんと表現しない人がいると、僕が食べているものまで陳腐なものになってしまう」ような気がするので、「僕が美味しくものを食べる環境を守るような一心」で「言葉遣いにうるさいおっさん」を演じるのだ…。
そして今夜はインゲンを食べている。
半分に切って塩茹でして、擦った胡麻と醤油で和えたシンプルなものだけど、これも美味しい。
枝豆にしてもインゲンにしても、特にこだわりもない全国平均的なスーパーで買うことが出来る食材だしその調理方法もなんということもないものなのだ。
しかし、スーパーに並ぶ凡庸な野菜であってもそいつがきっと露地物で旬を迎えているのだろうから安価なのだ…という点に目を向けると、身近なスーパーがそんなに充実していなくても季節を楽しむことはそれなりに出来るのだと思う。