黒澤明による「七人の侍」は映画の中でも最も面白いものだと思っている。初めて接した大学生の時に衝撃を受け、当時はVHSを貸し出していたレンタルビデオ店で何度も借りてきたものだ。
大人になってからはDVDを手に入れて何度か見たが、黒澤監督をして「鰻重にビフテキを乗せたようなやつ」だからして、上映尺だけでなく内容も濃いため度々観たりはしない。
…前述の「鰻重ビフテキ」も七人の侍について記録された本で読んだように思っているが、記憶があやふやだ。もしかしたら全く別の例え話だったのかも知れないが、その真偽は別としても筋書きから役者の演技、音楽から撮影まで本当に素晴らしい。濃いし、深いし、荘厳なところもあるし軽妙なところもあるし…とにかく面白さに繋がる全ての形容詞が当てはまるような名作なのだ。
それ故、観ればこちらのパワーを持っていかれるような気持ちにもなるので、おっさんになってからは度々観なくなった。4年に一度くらいだろうか。鰻重にビフテキを乗せたものに疲れを感じるようになったのだろう。

さて、今日はこの名作を劇場で観てきた。
これまでにスクリーンで観たことがなかったので、随分と前から楽しみにしていたものだ。しかし、引越の片付け作業にかまけていたら上映日程も終盤が迫ってきていた。なので今日の上映をネット予約して朝から観てきたのだが、本当に良かった。
あらすじは勿論、台詞もだいたい頭に入っている作品だ。冒頭の力強い筆書きの文字が流れていくだけで「ああ、この名作を素晴らしい音響の劇場で観ている…」と感動して涙を流し、登場人物の熱演に胸を打たれて涙し、この面白い作品も終盤を迎えたから残り時間も長くはない…と淋しくなっては涙し…。…と泣きどおしの3時間半だった。
最初に観た時期はあまりにもの面白さで多分2ヶ月に一度くらい観ていた大学生の時にはとにかく菊千代が魅力的だった。次いで久蔵。
「分かりやすい見せ場」の多い彼らに惹かれるのは当然のことなのだが、おっさんになってくると勘兵衛をはじめ他の侍たちのそれぞれの個性に惹かれるようになってきたし、百姓についてもその弱いところやズルいところなど、全てが人間臭くて愛情を抱くようになってきた。
とにかく、長年に渡って愛している映画なので長男と長女にも劇場で観ておくことを強く薦めておいた。長女は今日の朝から観てきたそうだ。長男は明後日の上映回を予約したようだ。
彼らの目にこの作品が面白く映らぬはずはないだろう。数日したら感想について語り合ってみようと思う。