「美味しさ」の要素

基本的に朝御飯を食べる習慣がないのだけど、今朝は朝からちゃんとした御飯を食べた。

30年くらい、夜は酒を飲んでものを食べていて寝るのも早くはないので朝はお腹が減っていない…という生活を続けていた。ただ、昨年あたりから夜寝るのも随分と早くなったし、酒を飲み始める時間も早くなった。

仕事での残業もほとんどなくなり、平日も19時過ぎには帰宅することが普通になったし、夜23時なんてド深夜という感じがするようになった。まあ、早くに眠ると夜中に目が覚めて2〜3時間眠れないということもあるのだが、早寝早起きは悪いことではない。

そんな訳で、近頃は朝御飯を食べることも増えてきた。ジジイになってきただけのことなのだが…。

さて、我が家には昨日から息子が遊びに来ている。昨日は彼に昼食を食べさせている時から僕は一人で酒を飲み始め、午後は喫茶のように莨と一緒に酒を飲み、夕方は彼と一緒にワインを飲んで莨を吸った。

もう5年以上前のことだが、当時高校生の息子が修学旅行でカンボジアに行き、そこで僕のためのお土産としてワインを買ってきた。オーストラリア原産の日本の輸入会社のラベルが貼られたやつ。一般にはまず美味いと言われるはずなどないし、酒としての価値などないようなやつだ。

しかし、一般の市場価値とは関係なく「酒のことを知らない息子が酒好きの父親に買ってきた下衆ワイン」というものは、当事者である僕にとっては凄まじい価値を持つものだ。

どこかで息子と一緒に飲もう…と思っていたのだけど、この数年僕はめっきりワインを飲まなくなっていたので、そんな機会はなかなか来ず、ようやく昨夜が「日本の商社扱いのオーストラリア産のカンボジア土産のワイン」賞味の日となったのだ。

父子二人で蛸刺しやら鰤の塩焼きというワインとの取り合わせでは全く頓珍漢なものを食べる。そして「嘘もんチーズ」と発酵の進んだ白菜漬けを噛み締めワインを飲む。美味しい!

ワインの味など分からぬ二人だが、このワインは非常に美味であった。1瓶1,000円もしないようなものの味だが値段など関係ない。なんなら僕たちにとっては「味すら」関係なく、何年も前にカンボジア土産で買ってきたものを一緒に飲んでいる…ということだけで美味しさを感じ取っていたのだろうから…。

むちゃくちゃな取り合わせの食卓だが、どの料理も不思議なほどカンボジアワインに合い、喜んでワインを飲んだ息子は彼にとっては驚く程のペースでワインを飲みすすめていき、そのうちコロッと眠ってしまった。僕も昼からはずっと飲んでいたので昨夜は20時半頃には終了…。

夜、大して胃に負担のかかるものを食べることもなく眠ったので朝の胃腸はスッキリとしている。朝から香貫山の周辺を散歩して、帰宅してから食べた朝食は美味しかった。

新米を炊いた。味噌汁もちゃんと作った。漬物も当たり前だがしっかりと乳酸発酵させたものだ。調味液に漬けただけのものではない「ちゃんとした漬物」だ。

美味しい朝食たる条件は充分に備えた料理だったが、そんなことよりも「久しぶりに息子と二人で食べること」が今朝の食事での一番の調味料だったのかも知れない。

……と、格好つけてみたが、やはりおかしな調味料を使わないちゃんとしたメシであることが大切なのだ。「父子の思い出」も大切ではあるが…。

息子と二人で「メシが美味いなぁ。静岡コシヒカリとは違う。おいち〜い!」とか「味噌汁の美味さも、これはどうしたことだ!」とか「漬物はやっぱり美味いなぁ」なんてことを喋りながら食べるのだけど、その時に「ここに添加物たっぷりのソーセージとかあると、全ての料理が台無しになるね…」なんてことを息子と話したのがとても面白かった。