山葵を漬ける

本当に何度と言うことなくこのブログに書いているのだけど、僕の生活は特に大きな変化もないまま日々が過ぎている。

年間、同じような季節に季節ごとの漬物を漬けて、その季節に対してだいたい同じようなことを感じとり、毎年同じような美味しいものに舌鼓を打って、そしてその季節が去っていく。

まあ、一日の生活からして、朝起きて仕事に出掛けて帰宅してから熱い風呂に浸かり、食事の支度をして音楽を聴きながら酒を飲んで眠る…という代わり映えのないローテーションばかりなのだから、そりゃ年間で見てみても、同じような数年が続くのも当たり前っちゃー、当たり前なのだろう。

 

さて、そんな代わり映えもしない年中行事のひとつである「山葵漬」のことを今日は記す。

3月に入ると山葵の花や葉が出回り始めるのだが、今年も僕はその入荷をパトロールしていた。手回り初めは一把で500円くらいするが、名残の頃になると300円を切ってくる。高価なので安くなるのを待とう…と待っているといきなりそのシーズンの山葵が終わっていた!なんて年が多い。

安価に買いたいという気持ちはあるが、時期を逃すと一年先まで出会うことの出来ない食材だから、この数年は「見つけたら躊躇せず買う」ことにしているし、「容赦なく大量に漬けて飽きるくらいまで食べる」ことにしている。

同じように漬けても仕上がりの良し悪しの差が大きいものなのだが、たいてい凄く美味しく出来るので「飽きること」はほぼなく、まだ食べたいな…なんて思っているうちにその年の山葵は終わるという塩梅だ。

 

今年はまだいつものスーパーに山葵が出て来ないなと思っていたら、農協に山葵が売られていたという目撃情報が寄せられた。僕の例年の漬物行動パターンを知る友人からの貴重な情報である。

その情報を知った僕は矢も盾もたまらなくなり、翌日の朝、出勤前に農協まで出掛けて、今年の初物となる「山葵の花」を買ってきたのだった。

例年のことであり、3〜4月という限られた時期にしか食べないものであるが僕にとってはお馴染みの味である。

今年も春が深まってきたことを実感するし、仕込む端から次の山葵のことを考える慌ただしさすら楽しく思う。

こうした楽しみは山葵に限ったことではなく、季節の中や、あるいは代わり映えのしない一日の生活の中にも存在するのだろう。いつもと同じような出来事であってもそれらを見過ごすことなく捉えて日々を大切に過ごしたいと思う。