酒に向かう食物

一昨日の昼過ぎ、東京から友人がやって来た。

彼と会うのは去年の夏の18切符旅行で僕が大分を訪れて以来のことだった。

酒飲みのおっさん二人が会うのだから、主たる目的は共に酒を酌み交わすことであり、そのために僕は前夜酒を飲まずに早くに眠ったりして準備を入念に行った。

人を饗す方法はそれこそ人の数だけあるのだけど、僕は彼を迎えるにあたって「なるべく普段の僕の食卓」に近い「普段僕が食べているもの」で一緒に酒を飲みたいと考えていた。

秋分の日である金曜日は14時頃から飲み始め、深夜の23時頃までよく飲んだ。その献立を記しておく。飲んだ順序に従っての記載なので、重複するものもあるし、何しろ多量の酒を摂取してメモリーポンコツになってきたので漏れもあるかも知れないが、思い出せることを書いておこう。

アイリッシュコーヒー、ビール、ウイスキーソーダ割、青柴漬け、らっきょう、胡瓜の辛子漬け、煮穴子、鮪刺身盛合せ(キハダ鮪、南鮪、芽葱、青紫蘇)、焼海苔、日本酒、熱飯、ウイスキーソーダ割、スモークチーズ、醤油ラーメン、ビール、バジルペーストのスパゲッティ、ビール。

こんなところであろうか?

後半は翌日の午前中に食べたり飲んだりしたものである。一夜のうちに麺類を2回食べてられる程の若さは僕らにはない。

南鮪や穴子は僕の普段の食卓には登場しない饗し用の御馳走献立である。それ以外は特になんと言うこともなく僕の食卓に出てくるものだ。

やって来た友人について僕は「漬物やら佃煮みたいな渋めのものはそんなに好きではなく、唐揚げやら串焼きで酒を飲むのが好きな男」と認識していた。

これは間違ってはいないのだけど、一昨日は存外に「我が家の渋いやつら」を喜んで食べてくれていた。

彼の弁を借りると「全てが酒に向かう味。酒をとにかく美味く飲むために隙がない味だ。」とのことだった。僕に気を遣ってそう言ってくれているように思ったので何度も問いただしたが、彼の食べっぷりと喜び方はお世辞ではない様子だった。

楽しく過ごしていると、いちいちその写真を撮っている場合でないくらいにその時間に没頭することも多い。一昨日の料理は僕は写真に撮っていない。

これは食べきらずに残していた刺身の写真だし、これは「平素の酒に向かうなんと言うこともないもの」ではないが、一昨日の楽しさを思い出させてくれる料理である。