宣伝しない映画を見る。

僕はなにかあるとジブリ映画のセリフやらシーンを引き合いに出したり、ジブリの音楽集を自室で聴くこともあるので、相当なジブリ好きだと思う。

しかし、大学生の頃に「紅の豚」を大阪難波の映画館で見てその陳腐さにガックリしてから、ジブリのアニメを映画で見たことはなかった。ハードボイルドを気取ったところでガキ向けのアニメだったことに無理を感じた。テレビのルパン三世などは子供向けでもありながらハードボイルドそのものを表現出来ているから、アニメかどうかはというよりも脚本そのものが陳腐なのだろう。

その後、ジブリ映画は次々とヒットし、もののけ姫とか千と千尋の神隠しとか話題になっていたが、それらを見たのはこの数年のことだ。それもテレビでやっているやつ。もののけ姫はコロナ流行の中に映画館でやっているやつを見に出掛けたのだった。

そして今日は、昨日公開されたばかりの「君達はどう生きるか」を見てきた。

宣伝しないことを宣伝にした映画だが、過去に見たことのあるジブリ映画と同様、チケット代を払って劇場で見る程の価値は無いものだった。実に勿体ないことをしたが、やはり実際に鑑賞しないとその作品をけなすことすら出来ない。そういう意味でチケット代に価値を見出すしかない。

何を言いたいのか分からないし、それを分からない観客が生まれようとも関係なしに作り手のマスターベーションのために集金をされたようなものだった。

 

プロデューサーのインタビューをここ数日のうちに見たのだけど「映画は劇場に来てもらって見てもらって楽しんでもらってナンボ。だから事前に余計な情報は入れない」みたいなカッコいいことを曰っていたが、「ならばその場で楽しめる範囲の不思議世界を描けよ」と思った。

現代音楽でビートを感じ取れたり、メロディのハーモニーを聴き取れないような難解な変態音楽をやっている際、一半の人にはなんのことなのかさっぱり理解できず「ここに何が表現されていて、作者のこういう思いがここに込められています」という開設を見てから後付でその他しみ方をなぞる…なんてことがある。

映画は総合娯楽であり、話の筋とか音声とか作画の美術性など複合的に絡んで見る側の印象が形成される。この映画は作り手の思わく解説が必要だし、テレビで放送されるのを見るのが丁度いいくらいのものだと思った。少なくとも500円以上の金を払うのは勿体ない。