引っ越すこと

急な話だが転勤が決まった。

サラリーマンであれば会社の命を聞くことが仕事でもあるのだから、それも仕方がない。しかし、現在の住まいを非常に気に入っている事もあれば、何よりも末娘との物理的な距離が離れるのが嫌だった。

…と言っていても、会社を辞めたりしない限り引越すことは避けられないので、嫌な引越であっても敢えてポジティブに楽しいことだと考えるようにしている。

会社の命により無理矢理に引越すのだから引越し費用は当たり前だけど会社持ちだ。梱包から荷解きまで僕はなんの作業もしない。そして、引越し先の家賃の9割方に当たる家賃補助も出るから経済的な損失は殆どない。

この時点で「引っ越すことのほうが得」と考える人も割といるのではないかと思う。

僕が赴くのは沼津という鄙びた地方都市だ。昨日は引越し先の内見のために町を見てきたのだが、その寂れ方に驚いた。

まあ、日本の地方都市の殆どが経済的にピークを迎えた時からは相当に活気を失っているのだから、このくらいの落ち込み方は普通だと捉えるべきなのかも知れない。

駅から近くの昭和風情溢れる商店街もシャッターを閉じている店が多いし、路地を歩いても営業しているのかとうに閉店したのか分からないような店が沢山あった。

もう何年も前から、大抵の欲しいものはネット通販で手に入る。町をぶらつかなくても、ウェブでものを選べるし、動画をはじめ面白いものやら色々な情報は町の中にではなく、ウェブの世界にある。仮想現実のようなウェブの中で人が生活する時間が増えているのだから、現実の商店街などの町を訪れる人も減る。いや、むしろウェブの世界の方が現実の世界なのかも知れない…。

僕がこれから引っ越す沼津という町に限らず、多くの地方都市が廃墟のようになるのも当然なのだろうと考えさせられた帰路の列車だった。