暇があるとスーパーやら農協に出掛けて、安い食材を買ってきて料理をするのがとにかく好きだ。勿論、それで一杯やるのが好きなのだから、食べることも好きなのだけど、作るのもそれ以上に好きな気がする。
今日は休みだったので、昼からスーパーをぶらりとした。
スーパーなんてのは、彼らが儲けるために活動するところだから仕方のないことなのだけど、年末から正月にかけての品揃えと価格には閉口した。
これは毎年思うことだ。
庶民が普通に大口を開けて食べるものはなりを潜め、やたらに立派な海老とか本鮪の柵や数の子や、珍味を多く使ったオードブルみたいなのが魚屋の店頭を埋め尽くす。
正月にはそんなものを食べたいと思う人も多いのだろうけど、僕は年の始まりにこそ「お値打ち品」を食べたいのだ。しかし、魚を獲ってくる漁師や市場の都合もあれば、スーパー側の思惑もあることだから、年末年始に新鮮な鯵や鰯を食べたいと望んでも、それは我慢するしかない。
しかし、新年が始まって2週間も経過すると、魚屋の品揃えもようやく普段の落ち着きを取り戻す。まあ、2週間、海老や本鮪といった御馳走食材ばかりを売っている訳ではないので、僕も今年も1月4日には半額になった美味しいそうなヒラマサを買ったりしているのだけど…。
さて、今日はいろいろな魚を買ってきた。
そんな中で、初めて買ったのが「スズキの子」である。大きな魚卵だ。
魚卵は好きだから、よく買う。
この冬も生の鱈子を買ってきて塩をまぶして水を抜いて、炙って食べる…そんなことを楽しみまくっている。
今日も美味しそうな生鱈子があったので早速買ってきて塩蔵しているが、鱈子の傍らに「スズキの玉子」が売られているのを見つけたので、こいつも買ってきた。
すぐに崩れてしまいそうな柔らかなスズキの玉子は、鱈子と比べれば何杯も安い。僕はこの数年、秋から冬になるとボラの子を買ってきて唐墨を作っている。スズキ子は唐墨にするには毛細血管も多くて、綺麗な見た目ではない。しかし、その「圧倒的に大きなかさと値段」は魅力的だった。
買ってきた鱈子とスズキ子は両方同じ要領で塩漬けにした。こうすることで魚卵からは余分な生臭さが抜けて、日持ちもするようになる。
そして、それを炙ったのがこちら。
一緒に食べ比べているのではないから、本当の比較は出来ないが、僕の稚拙な舌には鱈子とスズキ子の味に大きな違いは感じなかった。価格なんて本当に何倍も違うのに。
単に魚卵が好きだから、魚卵というものであれば、僕はなんでも美味しく感じるのかも知れない。本来は魚卵が好きなのであれば味の違いが分かる男になるべきなのかも知れない。
しかし、美味いと思えてそいつに舌鼓を打ち、尚且、そいつが安価なのであればそれで充分ではないか。そんなことを考えながら、スズキ子でウイスキーを飲む夜。