人から「食物は何が好きなのですか?」と聞かれると、「何でも大抵好きですね、肉も魚も。取り立てて偏食はありません!」と答えるだろうか。
実際、食物の種類…というか、食材で言うならば何でも好きだ。
しかし、それは表向きの話。
素直に言うと、何でも好きだけど「美味しいものならば何でも大好き」なのだ。卑しさ全開の答えだけど、それが全てだ。
「美味しいものならば何でも好きですが、不味いと思うものは口にしたくありません。出来る事ならば、化学調味料を使ったものも口にしたくありませんが、それらを美味いと思うことも多くあります。贅沢は言いませんが、手間隙かけたものを食べたいですね。そんなものが僕の好物です!」
…と言い切りたいけど、世の中で生活をしているとそんな風に答えられることも滅多にない。変な気遣いとか「逆の見栄」を張ってしまうものだ。
その結果、一歩踏み込んで好きなものを説明するとしても「特に好きなのは刺身です。刺身で酒を飲むのは大好きです。」なんて答えることが多い。
そんな答えの結果、テキトーなスーパーで売られているマグロと烏賊と養殖鯛の三点盛りの刺身が振舞われることも無くはないのだけど、実のところそいつらが出てきても、心は全くときめかない。
テキトーなスーパーが悪いわけではないが、スーパーの魚売り場で刺身にされて、大根のツマと一緒に盛合せにされて売られているものはテキトーな見栄えばかり重んじられていて、肝心の美味しさについては大したものがない…という僕の経験に基づくものだ。
マグロや鯛が盛り込まれているから御馳走なのかもしれないけれど、それが美味しいものである…なんてことはあまりない。だったら、鰯でも鯵でも新鮮なやつをぞんざいにさばかれて小骨が入っているような家庭料理の刺身の方が僕は美味いと思う(ことが多い)。
そんな風に受け答えするから経験することもある「好きな食物」であるが、実際に食卓によく登り、実際に美味いと感じて、好きだと思う食べ物がある。
それがトマトである。
つい先日も安売りのトマトを食べた。
春から秋までトマトをよく食べる。
メインとなる肉や魚の御馳走が何であれ、トマトは独立した治外法権のような感じで、和食だろうが洋食だろうかマッチして、美味しくたべている。
食事をともにする機会の多い子供たちからも「パパは刺身が好きって言うけど、一番好きなのはトマトなんじゃない?」なんて聞かれるほどだ。
そんな風に言われるとそんな気がしないでもない。トマトは本当に多くの頻度で食卓に登場するし、大抵美味しいと思って食べている。
しかし、そんなトマトにおいても、僕は「美味しそうなトマトを選んでいる」し「そんなトマトを美味しく食べるために工夫や努力」を惜しんでいない。
やはり「美味しいものが好き」なのである。