「北の国から」を見終えて①

数日前から、このドラマを見続けていた。


80年に始まった連続ドラマ。
そして、その後は数年に一度、時系列はそのままにまさに「大河ドラマ」として登場人物たちの生活を追った壮大なドラマだった。

細かな描写や設定、脚本や演出について、部分的に思うことはとても多くある。それらを含めて何度かに分けて思ったことを記しておきたいと思う。


今回はまずドラマの設定というか、放送結果の大枠について思うことを記す。


ドラマはまず、主人公になる黒板一家が北海道に移り住むことになるきっかけとなる黒板一家の崩壊のシーンから始まる。

自らの価値観は確固たるものを持っているのだろうけど、都会の生活や都会ナイズされた人たちとはうまくやっていけない不器用すぎる男。そんな田中邦衛がとる行動がドラマの軸となる。

連続ドラマとして放送された初期のシリーズに脚本家である倉本聰の思い…いや「想い」とか「理念」という方が正しいのだろうか…、そんなものが全て凝縮されているのだろうと感じた。


その後の単発ドラマももちろん面白い。
しかし、登場人物たちの数年間での変化を追うことに気持ちが取られる。そりゃそうだ。数年ぶりに放送されるドラマ特番の中で、前回からの数年分の出来事を詰め込むのだから、情報過多になるはずだ。

成長していく子供たちの様子、そして思春期から青年期を迎えるにあたって体験する苦悩や人間模様。同時にそれを取り巻く大人たちの変化。

長年続けてシリーズ化されたドラマだからこそ描写して表現できたことも多い、と言うか、そんな人物ごとの境遇に脚本家倉本聰が伝えたかったことが盛り込まれている。


主人公である田中邦衛のぶつかる苦悩を挙げてみると…

都会生活との離別の難しさ
田舎での子育て
父親一人での子育ての難しさ
別れる妻との距離の取り方
田舎暮らしでの知恵と手間のかけ方
田舎社会での人付き合い

金がない事への対処
物質重視社会への疑問
男女のすれ違いのもどかしさ
男としての矜持のあり方
親であることと恋愛の両立

思春期の子供の気持ちへの接し方
父親としての責任のとり方

苦悩する友への接し方



…挙げていけばキリがないほどに出てくる田中邦衛が面した苦悩。勿論、苦悩だけではなくて喜びの描写も交えてドラマは進んでいく。

こうした苦難にぶつかった時、どんな事を考えてどんな行動を取るのか?そして周囲の人間はどんな反応をするのか?

そうした人間模様が見る者に共感をさせたり、感動させたりするのだけど、僕は圧倒的に連続物のシリーズが好きだと思った。

連続物のシリーズでは、一話で進む話は数日の出来事であり、描写が細部にまで行き渡っている。簡単に言うと一つの出来事やテーマについての心情変化がたっぷりの時間をかけて描かれているように感じた。

ドラマの放送時期が80年代の初頭であることは、僕が子供として過ごした時期の話だから、その時代の懐かしさが僕を惹きつけているのかもしれないけど、人々のやり取りも泥臭くそれでいてエゴイストで、人が本来考えて悩むこと=共感して考えていくテーマが、そんな泥臭い人間模様の中に盛り込まれていた。