「北の国から」を見て思うこと

田中邦衛が亡くなった。
少し前のことだけど。

彼の演技について語れるほど多くの作品は見ていない。僕が好きだったのは「仁義なき戦い」の槇原の演技だ。役における槇原(田中邦衛)は、そりゃもうズルくてダメな奴だから、感情移入するような余地などない。徹底的に嫌な奴なのだけど、そんな役がいてこそドラマが面白くなる。

…って、一般に言われる彼の代表作は「北の国から」であろうが、僕も少ししか見たことがなかった。いや、殆ど見たことはなかった…という方が正しいのかも知れない。


そんなドラマを数日前から見ている。

ドラマを見て(と言ってもまだ全てを見終わっていないけど)感じることは倉本聰の脚本の面白さと、キャスティングをはじめとした「力(莫大な制作費)を注いだドラマはやはり面白い」ということ。

当時はそこまでの大物でもなかった役者だったのだけど、この作品によって出世した…という役者もいるだろう。しかし、作品が生まれてから40年くらい経つ今になって見てみると、やはりビッグネームが揃っていて豪華なキャスティングだと思う。


このドラマが生まれた1980年という時期は僕は小学1年生だった。主人公の一人である「純」は僕よりも少し年上だけど、当時を思い出しながら子供の気持ちになって感情移入するには充分な時代設定だ。

理屈臭くて、都会の生活が好きで、素直になれない生意気な小学生男子。僕は根っからの田舎者であるが、劇中における「純」の気持ちはよく分かる。

そして、子供を二人抱えて田舎暮らしで奮闘する田中邦衛が素晴らしい。演技ではなく、彼の「素」ではないのか?と思う程だ。

男親の持つ子供との接点における苦労、金のないことでの苦労、小さなことでも何かをやり遂げた充実感。様々な生活の様子の殆どに共感出来る事ばかりだ。

それも僕にある「根底からの田舎者っぷり」がもたらしていることなだろう。

親子の愛、友人との情、男女の愛情、人の数だけあるであろうその人なりの価値観、何を便利と思うかという生活様式、そしてそんなことの相違から生まれる確執…。普段の生活ではなるべく見て見ぬ振りをして流して無かったことにしてしまう「人間の業」がサラリと盛り込まれているように感じる。

もっと早くに出会っておくべきドラマだったと思うけど、自分なりにいろいろな経験を積んできた「今になって見るからこそ」一層面白いと感じるのかも知れない。