【旅の思い出】僕らが旅に出る理由 22年版

18切符の旅を始めたのは3年前からになる。

今から30年近く昔、大学生の頃も18切符を使っていたが、卒業して社会に出てからは20年間くらい使うことがなかった。

更に言うと学生時代の18切符の使い方はほぼ帰省の移動の為だったので、それは「自由に旅を楽しむ為」ではなく「安価に移動する為」という意味合いが大きかった。

会社員になってからはそれなりに忙しかったのだけど、勿論暇なときだってあった。そんな時にのんびり旅を楽しむような風流さは持ち合わせておらず、無駄に高価で早い移動の旅行をしてみたりもしたし、そもそも旅行でもすればいいのに、連休であっても夜の町に出掛けて散財しているような有様だった。移動手段がなんであったにしても、どの旅よりも無駄な金の使い方だ。


僕が18切符旅行を始めたのは「子離れ」が一つの要因であると思っている。

子供たちにとっても楽しい夏休みが始まると、僕も親として「どこか楽しいところに連れて行ってやりたい」など考える。そんなふうに思うものの、潤沢な資金がある訳でもなければ、何より子供の方が忙しかった。

夏休みになっても毎日のように部活があったり、受験生だからというような理由で僕と旅行に行っている時間がなかった。そんなことを理由にしているうちに、大した旅行もせずに夏休みが終わってしまうのだ。

夏休みの自由さに浮かれて大して勉強もせずに夏を終えていく子供たち。大きなレジャーも体験せずに、終盤線には僕と一緒に宿題を片付ける子供たち。

そんな夏を何年も過ごして、はたと僕も壮年に近付いていることに気が付いた。

子供たちに気を遣っている場合でもないのだ。彼らが望むなら一緒に連れていけばいい。僕は僕で夏を楽しまないといかん。僕に残された夏はあと何十回もあるわけではない。

…とは言え、学費やら塾の費用やら僕にも潤澤な資金などない。そこで18切符で時間だけは贅沢に使う旅行を思い付いたのが3年前だ。


そんな背景から始めた夏の旅だが、今年は長男との二人旅で二人して実家のある田舎を目指した。

時間をたっぷりと使った「ある意味、贅沢な旅」は大学生の専売特許ではないか。そして、長男の進学に際しては情けない話だが僕の親であり長男の祖父母にも援助してもらった。そのお礼も伝えねばならん。

これが今年、僕たち二人が旅に出た理由なのである。