水曜日に沼津に赴任して、挨拶回りやら残務整理やら、そして帰宅すると部屋の片付けなどで慌ただしく過ごしている。
これまで昼食に外食することはほとんどなかったが、沼津に来て初めて沼津らしい外食をした。赴任してから3日目、金曜日の昼のことだ。
この日は部下と一緒に昼食を食べに外に出た。沼津の商店街の一角にあるスパゲッティ屋を訪れようという意図のものだ。
沼津という町は人口20万人弱、ド田舎ではないし全国平均で言うとまあ平均的なところから少し下…というくらいの便利さなのかと思う。漁港があって海産物が美味いというイメージはあるが、まだ僕の行動の中で美味しそうな海産物は目にしていない。僕の生活便利圏内ではこれといった鮮魚店も見つかっておらず、今のところ全く「魚が美味い町」を感じ取ることが出来ない。
そんな町での昼食になぜスパゲッティ?と思う人もいるかと思う。ウェブや文献で見たものではなく、人への聞き取りから知ったことだが、沼津には人口の割にはスパゲッティの名店が多いようだ。それもイタリアンレストランで食べるスパゲッティというよりも「餡スパ」やら「ロメスパ」のような昭和臭の漂う日本製のやつ。
そうした店舗が残っているということの理由は分からないが、沼津において昭和スパゲッティが市民に愛され続けているということは間違いのないことだと思われる。
レバーのフライと赤ウインナーを中心とした具材「ミラカン」、そしてライスまでついたランチ!餡スパを食べるのは5年ぶりくらいのことだと思う。
今から13年前、僕は名古屋にいたのだが、その時に初めて餡スパを食べた。第一印象は特別に不味いとも思わなかったが、もう食べることもないだろうな…と全く好きなものではなかった。
しかし、月日の経過とともに餡スパが身近になっていき、そのうち普通に食べるようになったし名古屋を離れてからは懐かしく思う程になった。これは「天下一品のこってりラーメン」と同じ図式だ。
沼津の餡スパも普通に美味い。そもそも、餡スパという食物に美味い不味いの差が大きくあるのかどうかよく分からないが、普通に美味しかった。
洒落ていないけど清潔感のある店内でスパゲッティを食べる多くの市民。僕の来店時には若い人は少なかったが、女性客や老人も多かったことに驚いた。
スパゲッティ自体も決して華美なものでないが、もりもりとした炭水化物の美味しさに溢れていて、それらを静かに食べる地味な市民たち。
なんだか沼津らしい(って、住み始めて数日なので勝手なイメージだけど…)すごくイイ光景だな。そう思った。