スパゲッティ

同窓会が終わってもう1週間になる。1週間前の今頃は東京に行く準備をしていて、バタバタと余興の原稿の支度などをしながら焦っていたのだが、それも随分と昔のことのように思う。そして、盛会を迎え、その後で同級生たちと酒を飲みながら楽しく語ったのものの凄く昔のことのように思える。

…と、同窓会が終わってから特に「濃い日々」が続いている訳でもないのだが、「つい1週間前のこと」がなんだか遠い昔の出来事のように感じるのは不思議だ。

 

さて、昨日は少し前に食べたスパゲッティのことを書く。このブログにはいろいろとスパゲッティのことを書いたことがある。スパゲッティという食品はホビー性に富んだものだという持論は今も変わっていない。しかし、以前に比べるとそれを食べることはめっきりと減った。

一つには、歳をとってきてメシの量が減ったことがあるだろう。その気になりゃ沢山食べられるが、過食がとにかく体に毒であることは痛感している。ゴールデンウィークに背中が痛くなってからはとにかく食べ過ぎには気を付けている。

定食屋などで出てくる「本当に普通の量の一人前のメシ」であっても、それを1日に3食食べるのは既に過食なのだろう。それでも長年続けてきた食習慣はなかなか変えられず、夕食偏重のバランスは今だに続いているのだが、徐々にそのバランスも改善され始めている。

そうなると、夕食にスパゲッティを食べようと思うことが本当に減ってきた。夕食には酒を飲むことが多いので、酒に合う食物を優先するとスパゲッティは落選するのだ。

本やネット記事でスパゲッティをワインとともに楽しんだ…みたいなものや、美味しいスパゲッティが出てくるとワインも欲しくなる…みたいなのを読んだこともあるが、これには僕は全く同意しない。

スパゲッティなんて熱いうちにガツガツと食べるものだ。そんな食物とじっくりゆっくりとした時間を楽しむ酒の相性は良くない。酒のペースに合わせてスパゲッティを食べていれば、あっという間に冷めてしまうし、麺ものびるだろう…。そもそも、酒と炭水化物というのはまったくのミスマッチだと思うので「食べ方のスピード論」以前の問題なのだけど…。

酒を飲む時にはスパゲッティを食べない。…というだけで、僕の食卓にスパゲッティが上る頻度はぐっと減る。しかし、この間どうしてもスパゲッティを作りたくなって久しぶりにその食品に接した。

2ヶ月くらい前のことだろうか。長女と電話で自炊について話していて、スパゲッティをよく作るということを聞いた。

彼女も昨今の馬鹿な人たちがネットなどで推奨する「何でも化学調味料過多の味付けする行為」に毒されかけていた。馬鹿はスパゲッティを作る際に、ペペロンチーノにもカルボナーラにもトマトソースにも当然のようにコンソメとか鶏がらスープのもとをビシバシに加える。

大蒜の香りと唐辛子の辛味をまとったオリーブオイルと塩味のついた麺の旨さを楽しむはずのペペロンチーノは正式にはアーリオオーリオペペロンチーノと呼ぶ。その名の通り「大蒜オリーブ唐辛子スパゲッティ」なのだが、馬鹿の食べているものは「コンソメキューブ味のスパゲッティ」と呼ぶべきものだ。

…そんな馬鹿になるなよ!なんてことを娘とは話しをした。

それ以来、僕はとにかく変な味付けをせずにストレートな素材の味にするスパゲッティを食べたかった。しかし、前述の「過食回避問題」などもあり、それから2ヶ月後にようやくその機会が訪れたのだった。

シンプルなスパゲッティカルボナーラである。塩茹でスパゲッティをラードと絡めて、おろしたパルメザンチーズと混ぜて熱を入れて熱々にしたものを生卵にあわせる。チーズと玉子と塩と麺の味。実にシンプルでストレートな味だ。

たまごかけご飯に工業製品のふりかけをかけたり、ストレートに化学調味料の粉末をふりかけて食べると美味しい…という人がいるが、それとは全く対照的な味わいだ。

カルボナーラはベーコンや生クリーム、そこにチーズと玉子の味が加わった旨味過多の味付けが好きな人も多いだろう。それも美味いが、今回のシンプルなものは「炊きたての米の甘みと新鮮な玉子の旨さ、そこに香り高い醤油を垂らした味」みたいに、ストレートな旨さだった。

こうしたことを普通に考えさせてくれるという点からも、やはりスパゲッティはホビー性が高いものだと思った。