黒い鉢

気に入っていたものとの別れは突然にやって来た。

昨夜の出来事だが、酒に酔っていた僕は食卓を片付けようと台所に食器を運んでいた。どんな風に置いたのか分からないが、台への置き方が悪かったのだろう。

筍の炊合せを装っていた鉢が蓮華と一緒に台から落ちて、2つともが砕けてしまった。

6〜7年前に買って来て、サラダや煮物などを装うのにとても重宝していた黒い器である。取皿として使うものではなく、料理を装う食器の中では僕の家の中で一番に活躍していたものだった。

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この器は無印良品で見つけて、見つけた瞬間に欲しくなって買ってきたものだ。無印良品の道具は長年使える定番商品…みたいな触れ込みであるが、長年売られるものでもない。

気になるものがあれば、すぐにその時買っておかないと意外にすぐに廃版商品となる。この黒い器も僕が買った後ですぐに姿を見なくなった。シンプルで使い勝手の良いものだったから本当によく使っていた。

一人で食べるものを盛り付けるには少し大きいので、客のあったときには登場した。



気に入ったものを失うこと、そしてそれが既に手に入らないものであったときの落胆は大きい。残念ではあるし、その原因は自分のミスにある。

そうしたことを無理矢理忘れるためにではないが、失ったのが道具で良かったと思うようにしよう。また、同じように気に入ったものを手に入れられるではないか。別れがなくては出会いもないじゃないか…そう思うことにする。


【後日談】
アップロードした写真の3枚目は件の器では無い様だ。今回失った器は奥の白いものと同じ型のものだ。同じ大きさに見えるけれど、それは遠近法によるもので別の皿だと思われる。
懐かしくて遺影のような気持ちで「その器」の写真を探したがあまり残っていなかった。
写真には残っていないけれど多用したイイ器だった。