クリスマス・イブ

今年もクリスマスがやって来る。

本当に小さな頃は記憶がないけど、朧気ながらも記憶を持つようになってからの45年間くらいのうちで、今年は一番平穏なクリスマスイブを過ごしているように思う。


親に養ってもらって実家で暮らしていた少年時代は玩具をプレゼントで貰ったり、ケーキを食べたりすることに喜んでいた。その頃はクリスマス自体よりも、クリスマスを迎える商店街の活気だったり、街や家のステレオから流れるクリスマスソングにも凄く高揚していた。

大学生になって一人暮らしを始めたり、社会人になり自由になる金が増えたりしてからも、クリスマス商戦の「売り手が作り出した熱気」をありがたいもののように錯覚して、クリスマスイブは一年に一度の最も楽しい時間を過ごさなくてならない…というような気持ちになっていたものだ。

キリストは偉大な宗教家ではあるだろうが、彼の作った宗教を何も信仰しない僕にとって、本当にクリスマスはなんの関係もないのだけど、周りの雰囲気とか世相のプロパガンダいうのは恐ろしいもので、浪費も疲労も美徳であるかのようにクリスマスイブに惜しげもなく労力を注いでいた。


そんな乱痴気騒ぎのクリスマスイブを長年に渡って過ごしてきたのだけど、今年はウチでのんびりと普通の夜を過ごしている。

日頃と違うのはテレビでクリスマスの特番をやっていて日頃より豪華なアーティストが色々な歌を歌っていることくらいだろうか?そう言えば、実家にいた中学生の頃にはNHKの「ジャストポップアップ」のクリスマススペシャルを喜んで見ていたことを思い出した。能天気でそれはそれで幸せな時代だった。


去年からのコロナ肺炎は世の中を大きく変えた。飲食業界や旅行業だけでなく、「景気」というものに左右されるものは大きな打撃を受けているが、僕はいいことも沢山あったと思っている。

なくなるものではないけれど「馬鹿な消費文化」というものにも多少の抑制がかかっているのは素晴らしいことだと思うし、何よりも僕の好む生活スタイルを改めて噛みしめる「いい流れ」も生み出されているように思う。


夜になってから振り始めた雨は多少激しくなっているようだ。僕の住む町は温かいところだから「夜更け過ぎに雪へと変わる」ようなこともないだろう。しかし、普段以上に何ということもない食事を摂りながら、ゆっくりとものを考えながらウィスキーを飲む夜は素晴らしい一時だと思う。



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この一週間くらいで食べた「蕪を炊いたもの」やら「湯豆腐」の残り汁を中心とした「カレー味の煮込み」を食べて、どう言うこともないプロセスチーズを食べる。
普段の食卓よりも「どうでもいい感」満載だけど、身の丈にあった平凡な夜だ。

こんな夜がクリスマスイブだというのも乙なものだとしみじみ感じる。