胡瓜の芥子漬け

漬物を漬けて食べることが、僕の日常において結構大きな部分を占めることは改めて説明する必要もないだろう。

思うところあって、今年の初夏は辣韮を漬けなかったのだけど、糠漬を食べたり、古漬けを覚弥和えにして食べたりしている。

そんな中、思い立って胡瓜の芥子漬けを作ってみた。


芥子漬けというと「茄子の芥子漬け」が一番に思い浮かぶ。僕の田舎では「茄子の芥子漬け」はメジャーな食品だったのだけど、これまでに特に美味しいと思って食べた記憶はない。辛いのか甘いのか分からない、なんとも言えない漬物だったと言う記憶だ。

しかし、茄子の芥子漬けと言って思い出すのは、田舎を離れたおじさんが休みに帰省しては茄子の芥子漬けを美味そうに食べていたことだ。

利文おじさんと言う。
利文おじさんは酒飲みで、それで身を持ち崩したはずだから肩身が狭かったのではないかと思う。お盆とかお正月に親族が集まって皆で賑やかに過ごしている間も、親戚のおじさんおばさんの中でも偉そうに振る舞わず、ひたすら静かに酒を飲んでいたような記憶ばかりある。

その利文おじさんが、おばあちゃんの作った茄子の芥子漬けをとても美味そうに食べては「これがたまらんくらい美味いのう………」みたいなことを呟いていた事をよく覚えている。僕が小学校の低学年くらいのことだから、もう40年前の出来事だ。


僕の母も茄子の芥子漬けを作っていて、時折、小包の一つに送ってくれたこともあるのだけど、そんなに意識をして食べてもいなかった食品。

本当に思い立って芥子漬けについてネットで調べてみると、田舎では夏になると家庭ごとによく作る惣菜漬物のように思えた。



そこで、ここしばらく胡瓜の芥子漬けを作っている。
これが思いの外、美味しい。

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現在、僕の住む環境は美味い胡瓜には事欠かない。
春からこっち、ずっと胡瓜を食べているように思うのだけど、そのくらいに美味い胡瓜が安価に手に入るのだ。

そもそも僕は胡瓜という食材が好きなのだろうけど、芥子漬けにしてよく冷えた胡瓜をポリッと食べることは夏の喜びとして大きな発見だった。

今日も朝から農協に出かけて、引き締まった細身の四葉胡瓜を多めに買ってきたのだけど、芥子漬けを食べていると「もっと買ってきておいた方が良かった…」と、なくなる前から後悔し始める始末…。我ながら自分の食い意地に驚くほどだ。


今日は茄子も買ってきた。
美味しい夏野菜が安価に出回り、夏の暑さがそんな夏野菜を一層美味しく感じさせる。

利文おじさんが愛した茄子の芥子漬けにも挑戦してみよう。すっかりおじさんになった僕は、利文おじさんと同じように「たまらんくらい美味いのう……」と言うのだろうか。きっと言うんだろうな…。