夏休みの楽しい夜

僕の夏季休暇はもう1ヶ月以上前に終わったし、中学生の末娘の夏休みももう2週間前に終わった。まだ暑い日は続いているが、夕方になると多少の涼しさを感じる風が吹くし、昼間の日差しにも多少勢いがなくなってきた。秋が進行しているのだ。

そんな9月半ば、まだ夏休みを謳歌する上の子二人が帰省した。長男の後期授業は9/20から、夏休みもあと一週間だ。……いや、まだ一週間もある。そして、長女に至っては10/4が後期の開始日とのことなので、まだ無限と言ってもいいくらいに夏休みが続く。

盆の間に帰省しなかった彼らだったが、どういう訳かこの時期に戻ってきた。帰省に大義名分やら理由はいらない。帰ってきたくなったらいつでも帰って来ればいいのだ。そして、彼らの帰省を末娘は非常に喜んだ。

そんな夏の夜、僕は彼らを誘って外食に出掛けた。彼らがこのタイミングで帰省すること決めた時、僕の転勤はまだ決まっていなかった。意図せずしてこの町を去ることになった僕とともに「心地の良かったウチ」との送別会をやるような塩梅だ。

「ウチとの送別会」ということで、我が家での会食を考えていたのだが、よく考えると僕の手料理自体を食べる機会はこの先も何度もなくあるだろう。しかし、この町の飲食店で親子4人が揃って会食することはこの先何度あるのかも分からない。ないこともないだろうが、どのくらいの頻度で実現できるのか?すらよく分からないのだ。

そんな夜に皆で訪れたのは町の中心部からは少し離れた居酒屋だ。「手羽先」を売りにする店なのだが、刺身もお新香もフライも何でも美味しい。

子供たちをこの店に連れてくるのは初めてだったのだけど、僕はずっと昔から「いつかここの美味しいメシを食べさせてやろう」と考えていた。

美味しいものを一緒に食べながら、色々な話をすることの楽しさ。皆が揃って笑いながら過ごすことの楽しさ。暦の上ではとっくに秋なのだけど、夏休みの楽しい夜、お盆に親戚が大勢集まった時のような楽しさがそこにあった。

2時間程度の会食で美味しいものを堪能した僕たちは僕のウチへと向かった。

夜風はすっかりと秋風になっていて、とっくに終わった夏を「夏休みの残りの破片で無理に楽しんでいる」ような寂しさを感じた。「楽しい時間を過ごすこと」と「その楽しさが終わるときに訪れる寂しさ」は表裏一体であることを感じされられる夜だった。