メシの価値は価格で決まる

昨日の出来事なのだが、僕は旧居のガス閉栓の立会のために少し前まで住んでいた町に移動していた。

この日は僕にとっては珍しく車で出掛けたのだが、車で離れた町まで移動する行為というもの自体が久しぶりのことだった。

今になって思えば、僕自身は4年くらい前に自家用車を手放したし、その後も仕事で車に乗ることも僅かにしかなかったし、プライベートでレンタカーなどを借りて車を借りて乗ることも本当に少ししかなかった。大抵の移動は自転車か徒歩だったし、長距離移動となるとそれは専ら「青春18切符」…という生活をこの5年ばかり送っていた。

そんな移動事情での生活だった訳だから住んでいた郊外にある飲食店のことなどすっかりと忘れていたのだけど、昨日のドライビングの際に「町外れに佇む国道沿いの店」を見つけてしまい、なんとも懐かしい気持ちになった。

「スマル亭」というその店は静岡県限定のものなのだろうけど、僕にとってはとても懐かしく感じる店だ。だからと言って、この店の食物を美味しいと思ったことは多分一度もない。これは断言出来る!

なんだか夜遊びしまくってしまった真夜中とか、昼間に町をウロウロしていてどういう訳か入店してしまった時に食べたことのある「駅蕎麦のような麺を饗する店」なのだが、マジでここの蕎麦もうどんも不味い(…と僕は思う。好きな人には申し訳ないが)。

そんな店なのだけど、昨日は「どうにもこうにも懐かしくて堪らなくなって」この店に立ち寄った。時間は16時くらい。夕食を美味しく食べるためには致命的なダメージを食らうような「良くない時間帯」での食事である。この時間にものを食べることに相当躊躇したのだが、懐かしさが僕の理性をぶち壊しての行為である。

桜海老かき揚げうどん」に生玉子をつけたものの価格は860円だったと思う。これは僕の外食基準で言うと「割と御馳走」なのだが、昨日は久しぶりのスマル亭に興奮してしまい、価格を気にすることなくこのメニューを券売機で購入してしまった。立喰い蕎麦みたいなうどんなんてそんな値段を出してまで食べるものでないのに…。

 

……結果は明らかだった。

スマル亭のうどんは値段の割には全く美味しくない。480円とかで食べられるならば、僕は「スマル亭サイコー!」と言うのだろう。

↓こんな感じで。

しかし、おそらく10年ぶりくらいに食べたスマル亭のうどんは驚く程に美味しかった。

麺なんてコシも全くない「うどん玉」だと思っていたらそうじゃなかったし、オツユも単に熱いお湯で薄めた醤油汁だと思っていら、なんと!なにかの出汁の味がしたのだから!

これは僕の中での「スマル亭うどんへの期待値」が全く高くなかったことに由来するものであり、本当に美味しい訳ではない。外食で900円くらい払って食べるものとしての評価としてはやはり最悪の成績である。素直に人に薦められるシロモノではない。

でも、とにかく懐かしく感じたこととか「そういや、10年くらい前にも桜海老かき揚げうどんを食べて、コレは最悪!」と腹立たしく感じたことも思い出したりすることが出来た「タイムカプセル」みたいなものとして楽しい食事だった。

 

食物の味なんて言うものは大方そんなもので、僕が好んで割とよく食べる「袋に入ったインスタントラーメン」なんて、化学調味料でなにかの味を整えた工業製品に過ぎない。

しかし、僕はそんなインスタントラーメンを美味しいと思うし、別にチープなものを軽んじるつもりはない。でもスマル亭のうどんはいっぱしの値段を取るものなのだから「もうちょっと頑張れよ」と思うし、コストパフォーマンスで言うと「人には薦められない悪質なメシ」なのだと改めて感じた。