秋の御馳走についての備忘録①

十年近く前から、一緒に酒を楽しむ友がいる。

この友とは「酒とうまいものを自分で支度する」ことを中心に過ごすので、必然的に僕の生活における「コア部分」で接することになる。

2〜3ヶ月毎の頻度で会う。
昔、割と近くに住んでいた頃は10日に一度くらいの頻度で一緒にメシを食べていたものだ。気の置かなさ…で言えば親戚のようなものだ。

僕より10歳近く若く、うまいものを食べたいという欲はあるものの知恵はないのだから、彼は当然のように僕の舎弟みたいな存在となり、春夏秋冬の味をこの数年、一緒に探求する仲になった。


そんな舎弟が遠く離れた町から僕のうちにやって来た。

秋になると美味いものが多く出回る。
それらを逃すことなく全て食べたいのだけれど、おっさんになると胃袋も弱ってくるので、闇雲に美味そうなものを食べていては、全てを美味しく食べることもなく食事の機会は終わっていく。

今回も厳選した(と言ってもあまりに高額なものは避けるのだから、家庭料理の延長に過ぎないが…)味覚を、記しておきたいと思う。


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イタヤ貝。
この貝をよく食べるようになったのはこの数年のことだ。貝柱が冷凍されているものが、近くの量販店で手軽に買えることに気がついてからの事だ。

可愛らしい小ぶりの貝柱、まさに小柱であるが、これは手軽に食べられて美味しい。火を通しても甘くて美味い。解凍したものを生で食べても甘くて美味い。

「結局、甘くて美味い」としか言えないのか!
そんな突っ込みもいただきそうだが、本当に甘くて美味い。なんと言っても手軽なのだ。

この日はアルコールを飛ばした酒で軽く火を入れて、中は生、外は少し白く火が通った状態のものを三葉と和えて、すだちを絞って食べた。

塩で食べても、すり胡麻をかけても、醤油を数滴垂らしてもどう食べても美味しい。

「これをかき揚げにしても美味いですよね」
「これを炊き込みご飯にしても美味いですよね」
「これを冷製パスタにしても美味いですよね」
「これを熱いパスタにしても美味いですよね」

これらは全て後輩の弁。

しかし、全てが真実である。

汎用性が広く、そのうえ手軽さもある。
そして、そんなにも高くはない!
今のところ、イタヤ貝のことを悪く言う理由など見つからないのだ!

イタヤ会社自体は秋の味覚ではないのかも知れないが、たっぷりと絞りかけるすだちは紛れもなく秋の味覚。