言いたくない辛辣なこと

タイトル「言いたくない辛辣なこと」なんて、日々の生活においては割と沢山ある。

社会で生活をしているとそんなことばかりだ。「取引先との契約終了」「提案いただいたものへのお断り」あるいは「お客からの要望に応えられずそれを断わる時」など…。

ただ、そうしたものは大抵が仕事に関することであり、仕事を切り離した完全に僕のプライベートでは「言いたくない辛辣なこと」など、そんなに多くはない。だが、一昨日の体験はまさにそうしたものだった。

一昨日の昼間、安価に入手したトリ貝はそりゃもうとても楽しみで、帰宅してから熱い風呂に入りすっきりとしてから丁寧に調理した。

…と言っても、塩茹でにして食べるだけだから、それは調理というようなものでもない。しかし、かんたんにポロッと割れてしまうトリ貝の殻を丁寧に扱い、程よいと思われる塩分濃度の塩を入れたお湯で茹でるのである。

 

こうして茹がいたトリ貝がこちら。安価なものだけあって、そのほとんどは既に殻から身がべローンと出ているようなものだったので鮮度抜群とは言えぬものだった。なので、多少茹で過ぎのように熱を入れた方が良いかと思い長めに茹がいた。

年に一度くらいしか接することもない殻付きのトリ貝だ。僕の期待値は最高に達していたことも良くなかったのだろう。その期待を思いっきり裏切るほどに…とにかく、こいつが不味かった…。

これまで殻付きのトリ貝を手に入れた時はだいたい殻ごと塩茹でにして食べてきた。ワタの部分も雑味と言えば雑味なのかも知れないが、独特の味わいがありそれも一緒に楽しんでいた。

しかし今回のトリ貝のワタの不味さと言ったら!秋刀魚など魚のワタのような苦味はないが、個体差によるがとにかく良くない匂いがするのだ。酷いものだとアンモニア臭。

9つばかり茹がいたトリ貝を半分食べたところでその先は全く食べたくなくなった。この半分にしても「あれっ?ま、不味いぞ…。いや、そんなことは無かろう。もう一つ食べてみるか…」と不味さへの懐疑心とか好奇心のようなもので食べ進めただけだから、全く美味しくなどなかったのだ。

結局、残りのトリ貝を捨てるのも惜しく、そいつらはバター焼きにした。困った時のバター焼きなのだ。とりわけ今日のトリ貝については「バターが美味いだけ」で無理矢理食べてしまおうというような代物だ。

バターでソテーするとワタの部分の水分も抜けて味が凝縮される。貝のワタが焦げてくる匂いはサザエの壺焼きと同じような匂いがし…と、こう感じたことをここに記していると「当たり前だろ!魚を焼いた時に鰯を焼いた時と同じような匂いが……って言ってるのと変わりないことだ。」と思った。トリ貝もサザエも貝なのでそりゃ同じような匂いもするだろう。

バターの濃厚さと凝縮されたワタのほろ苦さ…これらが相まって口中に香りが広がる。…と書くと何だか美味そうなものを食べているようにも思えるが、バター焼きにしたところで特に美味いものでもなかった。

大好きだったトリ貝。そしてそれを見つけて食べるのは春も闌になってきたことを教えてくれる季節感溢れる出来事だった。そんなトリ貝のことを悪くいうのは気が引けた。「あれは何かの気のせいとかだったのでは…?」と今でも思いたい。

しかし強い意志を持って言おう。全てのトリ貝が美味いわけではない。なんならメチャ不味いものもある。みんな、気を付けろ!