【旅の思い出】ホテルに泊まること

18切符を使っての節約旅行ではあるが、旅に出た6日間、全ての夜をホテルで過ごした。

野宿をするとかホステルに泊まるというような節約ぶりはなく、贅沢と言えば贅沢な旅だった。

夜になっても夏の暑さの治まらない中で、汗を流さずに眠るのも嫌だったし、大分での御馳走晩餐を除いて、その他の日は地元の商店で買った地元のものを基本的には食べていた。外食もしないのだから、そうしたものを食べる空間は極力快適なところを選びたい…という「贅沢への言い訳」めいた思いもあった。これは日々の生活の中で、僕がおっさんになり身に付いてしまった贅沢なのだろう。


さて、時系列は入れ替わったりするのだけど、この夏、ホテルに泊まった時に感じたり考えたりしたことをこの記事に記しておく。


大分を後にした僕は東を目指した。
ひたすら東にも向かえばその日のうちに京都まで行くことは出来たのだけど、移動距離の限界に挑むことは止めた。

なぜなら、京都に辿り着いたとしても僕はホテルに泊まるだろう。ならば折角お金を払うホテルの滞在時間はそれなりに楽しくゆっくりと過ごしたいと思ったからだ。

夕方前にチェックインしようが、夜10時を過ぎてからチェックインしようが、一泊の料金は変わらない。夜遅くになると、到着したその町で夕食を買ううえでの選択肢もぐっと狭まる。ホテルに着いてバタンと眠るだけならばそれこそ野宿でもいいではないか!そういう「貧乏志向」をまぶし込んでの選択だった。


そんな考えから、僕は夜の8時過ぎには岡山行きの列車を降りて、鈍行列車での移動中にネットで調べて予約しておいた福山のホテルに泊まることにした。

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※写真は福山の到着前の乗換の時のもの。

「去年の夏旅」の際にも、四国を後にした僕は福山に泊まった。古くからの友人がたまたま福山に出張していることを知ったからだ。その時も外の店には出掛けず、ホテルの部屋で友人に買っておいて貰ったスーパーの刺身やら惣菜をアテに、四国で買ってきたばかりの「土佐鶴」を楽しんだ。このホテルは少しばかり値は張ったが、友人と酒盛りすることを考えると、充分に快適ないいホテルだった。

今年も同じような時期に福山のホテルに泊まるのだけど、今回のホテルが「笑うしかないくらいにおかしなところ」だった。

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「カフェにでも暮らすことに憧れるこだわり20代」向け、とでも言うのだろうか?あらゆるアメニティとか設備が「丁寧な生活」とか「意識高い系の生活」仕様なのだ。

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それらは全て「ただ寝泊まりするだけのハコではない」仕様だったようだ、彼らの主張によれば。



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そんな大層なホテルに泊まり、近所のコンビニ食材でウィスキーを楽しむ僕…。福山駅周辺のスーパーはどこも20時には閉店していて、駅の近くで食物を買えるのはコンビニだけだったのだ。

カフェ風のホテルの部屋に沿うようなコンビニ食材を選び、ホテルの部屋のテーブルで食べるのだけど、このテーブルと椅子が本当に使いにくかった。高さが食事を摂るには適していないのだ。

オシャレ重視だから仕方無い…と、寛容に考えたのだけど、買って来た食品やら氷を冷やしておこうとした冷蔵庫も「オシャレ重視で実用性にかける意識高い仕様」だった。

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パッと見ると、欧州風の古めかしいオーブンなのか?薪ストーブなのか?と思うような形なのだけど、キャパ…というか、冷蔵庫内の間取りが本当に使いにくく、1リットルのペットボトルを立てて入れられない「オシャレのみを重視する仕様」だった。

当たり前のように、氷のサーバーなんてものも、オシャレホテルには備えられていないので、氷も冷蔵庫で冷やしておかねばならなかった。



狙い所はブレていない!
細かな点に至るまで「オシャレ風に仕上げよう」と、スキの無いようにこだわりが具現化された部屋ではあるが、ここに泊まって設備を利用する人の「使い勝手」は無視をしよう!というこだわりまでスキが無かった。凄い部屋だ。

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こうなると「この部屋を笑い倒そう」と物凄くポジティブになれて、部屋の隅々までそのこだわりを楽しんで福山の夜を過ごしたのである。


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意識の高い一夜を過ごした僕は、ホテルの朝食チケットも買い足して、意識高い気持ちで福山を去ることにした。

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ホテル一階のカフェバーで出されるこだわりのサンドイッチとホットドッグ。

目の前で大学生バイトのお姉チャンが作るサンドイッチは、「中学生の娘の方がもっと手際よく作るのではないか」というくらいにのノロノロ調理だったし、案内された席からはその様子が丸見えだった。その出際の悪さをショーとして見せようという露悪趣味でもあるのではないか?と感じるくらいに、本当にバカが作る朝食のようだった。

調理過程を目の前で見ているだけで思っていたのだけど、食べてみると想像通りに味が薄く、厨房のマヨネーズを借りて追加で自己調味が必要な程だった。本当は塩を借りたかったのだけど、朝食時のこのキッチンでは「マヨネーズとケチャップ」でしか、味付けをしていない様子が見て取れたので、気を遣ってマヨネーズだけを借りたのだった。


そのカフェでは20代後半と思しき威勢のいいお兄チャンサラリーマンたちが「これ、バリ美味いっすね!ウヘヘへ♪あと、お姉さん可愛いっすね!」と喜んでホットドッグを食べていた。コントの1シーンを見ているような「分かりやすいバカっぷり」だったが、この人たちにとってはこのホテルがとても素晴らしい環境なのだろうと思った…。


そう!
そうなのだ!

ここは雰囲気だけを楽しめる若者…いや、そう言うと「若者」に悪いかもしれない。老若男女問わず、「使い勝手や味は無視して、雰囲気重視で楽しめる人」向けのホテルなのだ。僕をターゲットとしたものではなかったのだ。

料金はこの旅の間に泊まった他のホテルとそんなに差はない。「意識高い、単なるハコではないところに泊まりたい人」とか「使い勝手を無視して格好をつけた部屋で爆笑したい人」には是非ともお薦めする。