冬の夜に汁物を啜る

大して寒くもなく、むしろ日本の中でも一番温かいのではなかろうか?と思うような町に僕は住んでいるのだけど、寒く感じることを止めることは出来ない。これは数日前にこちらのブログにも書いたとおり。

今夜は職場から帰宅して「ある種の安堵感」を持って酒を飲んでいる。

以前は僕の先輩であり上司でもあった方がこの夏からは僕の部下になっていた。この方が定年を待たずして退職する。僕は有給消化は出来得る限りするのがサラリーマンの特権…と言うか当たり前の権利だと思っているので、尊敬する先輩部下の退職に際しても有給消化を奨励した。

そのため、残されたメンバーの負担はとても大きくなったのだけど、これも仕方のないことだと思っている。そして、それによる業務の多忙化だけでなく、彼を送るための宴席も「昼夜含めて数々の戦い方」を教えて下さった先輩の送別会なのだから、万全の準備というか「逆に卒論を提出するような気持ち」で支度をしていた。

先週のバンドのライブもあり、とにかくいつも何かやらねばならんことに追われているような一ヶ月だった。

その努力の場が明日の送別だったのだけど、これが延期することになった。理由はコロナ蔓延の為である。

残念に思いつつも、宴会が延期になったことを喜んでいる「何かの演芸を支度していた部下たち」も多いと思う。僕も実はホッとしている。支度をしなくて良くなった訳ではないのだが、その場が明日ではなくなり、時間的な余裕が生まれたことは嬉しく思うものなのだ。

今週は週の頭から豚汁を食べている。仕事もそうだが、宴会の支度で忙しくなることが分かっていたからバンドのライブを迎えた土日のうちに仕込んでいた常備菜のようなものだ。

鍋いっぱいに作り、途中で具材を足しているので常に鍋いっぱいの豚汁だ。味が薄くなってくると酒粕と味噌を足しているので、これは豚汁というのか粕汁と呼ぶのか?というような汁物である。

これを先週あたりから稼働させ始めた石油ストーブで温めながら、適当なタイミングで椀に装ってはそいつを啜り、酒を飲んでいる。

汁物で酒を飲むなんて…と思う人もいるかも知れないが、これは鍋物と一緒なのだ。田舎のウチで囲炉裏に鍋が据えてあり、その鍋の中には最初のものはいつ作ったのか分からないけどとにかく食べ続けられている汁物が食卓を彩る…いや、彩るなんてものではないのかも知れないけど、とにかく食事として出てくる……みたいなものだと捉えている。

あるいは「北の国から」の黒板一家がストーブで温めた汁物を菜に質素な食事を攝っているのと同じような気持ちで、僕は石油ストーブで温められた豚汁のようなものを食べるのだ。

そんな昭和以前的な食べ方もいいものだと思い、椀に入った豚汁を啜りながら酒を飲んでいる。