ダスティンホフマンの朝食

今朝のことだが、ものすごく久しぶりにフレンチトーストを作って食べた。「ものすごく久しぶり」なんて言ったが、作ったことがあるとしても小学生の頃のように思うし、それも妹が作るのをそばで見ていたレベルだったような気もするから、その実は初のフレンチトースト作りのようにも思える。

そもそも僕がフレンチトーストという食品に惹かれることなどほぼなく、作るどころか食べることも40年ぶりくらいではないかと思う。なぜそんな食品を食べることになったのかというと、単にパンを持て余したからである。

先週、自転車でうろうろしていた時に初めて入るスーパーでフランスパンを買った。半額で売られていたので、なんだかパンを齧りながら酒を飲んでみたくなり買ってみたのだ。

パン切り包丁で切って2回食べたと思うが、半分以上が残った状態だった。この残されたフランスパンはカッチカチに硬くなり、口に入れることを想像するだけで前歯の裏が痛くなってくるような気がした。そんな訳で卵液に浸したフレンチトーストにすれば美味しく食べられるのではないかと…。そんな経緯である。

牛乳と卵と少量の砂糖を混ぜたものに浸して一晩。バターを落としたフライパンで弱火で熱をいれる。

製法としては全く間違いはないように思う。強いて言うなら一晩も卵液に浸しておく必要はなかったのかも知れない。

こうして作られたフレンチトーストであるが、特に美味いものではなかった。フライパンというものはパンの繊維の密度が薄く、パンの中にも基本のような隙間が沢山あいている。そのためスカスカしていて牛乳と卵によるクリーミーさみたいなものも相当に低いし、繊維の結合力も強くないのでボソッと崩れるようなところと、皮のほうは噛み切り辛いくらいにしっかりとしている。

「クレイマークレイマー」の中でダスティンホフマンが幼い息子のためにフレンチトーストを作るシーンがある。あれは。ダスティンホフマンが家事を一切やってこなかったことの描写、そしてフレンチトースト作りを息子との絆の深まりを表現する素材として取り上げているので、ちいさな息子も食べたがらないくらいに不味いものだった。物語が進むにつれて彼のフレンチトースト作りも上手になっていくのだけど。

それと比べると、僕のフレンチトーストはきっと美味いものだったのだろう。しかし、出来の良し悪しに関わらず、僕はフレンチトーストという食品を好きではないのだと思う。