酒場で思ったこと

昨夜は外の店で酒を飲んでいた。

僕が外で飲むことなど滅多にない。接待で飲食店に行くことは割とあるが、あれは仕事なので僕の中ではリラックスしたり楽しんだりすることとは全く紐付かない。

一人で酒を飲みに行くのはどれくらい久しぶりのことだろう?沼津に来てからは間違いなく初めてのことだし、その前もいつだったのか思い出せない。行きつけのおでん屋に一人で行くこともあったが、それも思い出せる範囲ではもう何年も前の事のように思う。

昨夜はウチから歩いてすぐの店でジャズのセッションを見ながら酒を飲んだ。セッションに参加するのではない。酒を飲みながら見ていただけだ。

セッションにおいて基本的には「常連の仕切るジイさん」が他のメンバーに指示をするのだが、それは指示というよりも命令しているようで見ているこちらも気持ちの良いものではなかった。

僕が指図されているわけでもないし、セッションを仕切るには誰かが指示することが必要なのだが、なんだか横柄に感じられた。これはジイさんの風体やら声質によるところが大きいので、その店やらそのジイさんに馴染んでくると気にならなくなるのかも知れない。

 

昔、社会人になった頃によく行っていたバーがあった。そこの常連たちとの会話は楽しいものだった。なんだか、一つのコミュニティで徐々に市民権を得ていくような感じ…。

それは「よく行く」というよりも「入り浸る」というような頻度だったから、そこで会う人たちのことはよく知るようになるし、後から来るようになった人もなんだか気を遣ってくれるような感じになっていたように思う。

そんなことをしているうちに、僕もその店にあまり行かなくなった。当時はその原因など考えもしなかったが、常連になってきて生活の色々なことを皆と話すようになり、その店では「非日常のスマした顔」などできなくなったからかも知れない。

また、常連メンバーの年齢層が下がってきて、当初と比べると馬鹿ガキが増えた。威勢の良さとか乱暴な挨拶を社交性と勘違いするような馬鹿たちだ。

薄暗い部屋のスツールでジャズやソウルを聴いて時折クスリと笑う…。そんなバー文化は姿を消し、イエーイ!と言いながらグラスを飲み干し、下品な話題と笑い声が響く店になっていた。そしてその店は間もなく潰れた。

…まあ、「これは常連が悪い」と言うか「変化していった常連の質が悪い」のだけど、昨夜のジイさんはそんな感じの質の悪さを思い出させるヤツだった。