【読書】子供の頃に読んだ本

子供の頃に読んだ本で印象に残っているものというのは、その後その内容を忘れていても、やはり心の奥底に深く刻まれているものだと思う。


思い返してみると、僕の育った環境は読書をするには恵まれていたのだろう。

学校の図書室はある程度当たり前のもの(みんなが利用出来るという意味で。そこの蔵書の奥深さには言及しない。)として捉えるけど、学校の蔵書とは別にして、それなりに意義の有りそうな書籍であれば親が惜しみなく買い与えてくれたし、地域の図書館にも頻度高く連れて行ってくれて読んでみたい本は簡単に読めたように思う。


昭和の末期に少年期を過ごしたのだから、「本を読んでいる暇があるなら薪を拾ってこい!」という二宮金次郎みたいなこととか「夜、本を読むくらいならば電灯料が勿体無いから灯りを消せ!」なんて左門豊作みたいなことはなかった。

そんなものはとっくに前時代的なものになっていたのだけど、やはり僕の育った環境は「読書には優遇されていた」のだろうと、今になって強く思う。


子供にとって「読書に優遇された環境」というのはどんなものだと思うのかを記しておく。


■親がお薦めの本を与えてくれる

これは親の資質にもよるのだけど、自分で何の本を読めばいいのかよく分かっていない頃に、僕においては親がそれっぽいものを買い与えてくれていた。基本的には「夏休みの読書感想文課題図書」だったりするのだけど、僕の親が薦めてくれたものはそれなりに面白かったような記憶がある。

勿論、当たり外れはあるのだけど、今でも記憶に残るものを挙げておく。

プゥ一等あげます、兎の眼(灰谷健次郎)
龍の子太郎、ちいさいモモちゃん(松谷みよ子)

このあたりが代表格なのだが、灰谷健次郎松谷みよ子も素晴らしい児童文学作家だと思う。両氏の作品は大人になっても、大人になったからこそ感じられる深さがあると思っている。


■欲しい本を与えてくれる

小さい頃の本との出会いは、まずは親が与えてくれるものなのだけど、そのうち図書室で借りてきて読んでみると面白くて、そのシリーズを網羅したい…なんて思った時にはそいつが貸出中だったり、そもそも学校の図書室には置かれていなかったりもする。
そんな時に僕は親に本を買って欲しいとねだるのだけど、そうした本は大抵買い与えてくれていたように覚えている。

ぼくは王様シリーズ(寺村輝夫)
ズッコケ三人組シリーズ(那須正幹)
江戸川乱歩の少年向けミステリー

このあたりが代表格になるのだろうか。
親の知らない僕の中での読書的な自我をとくに問いただすこともなく、欲しがるものは大体与えてくれたように思っている。


■本の感想を会話する

これまでに二点、読書の機会を与えてくれたことについて挙げたが、僕の親は読んだ本の感想について子供の語彙力や理解力をおそらく鑑みたうえで話し合ってくれていた。これが一番大きかったのではないかと今になって思う。本を与えてくれなくても、本当に読みたいのなら図書室で借りて来ればいいしのだけど、「本を読む行為そのものを尊重してくれていた」ことはイイことだったと思う。

何が面白いと思ったのか教えて?
なんでアイツは悪いやつなの?
それを読んで、あなたはどうなりたいと思ったのか?

他愛もない会話なのだろうけど、面白がってあらすじをなぞるだけではなくて、その文章から何を感じ取ってそれが僕の思考にどう生きるのか?そんなことを導いてくれていた。

「面白かったよ」というだけの感想ではなく、なんでなにが面白かったのか?そこを考えることは今でも大切なことだと思っている。


■読書の時間は治外法権

あと、僕のウチでは漫画とかでなく、それなりの本を読む時間は勉强をしている時間と同様に扱われていた。まあ、小さな子供の頃だけど。しかし、計算ドリルをやっていなくても、名作全集を読んでいるのならば多少は勉強していなくても許されたのだ。

これは単に「勉強しなさい」という母親をいなすだけのことだから、本質的にはイイことでもないのだろう。しかし、そんな「いなすだけの小技」が読書に繋がっていたのは間違い無いので、これはこれで良かったのだろうと思う。



そんな子供の頃の読書の思い出だが、小学生の頃を思い出してみて一番思い出に残っているのは「岩崎書店のSFシリーズ」である。

装丁が布を使った重い本で、イラストは柳原良平とか小学生なりにもデザインがカッコいい本だった。勿論、文章もベルヌの地底探検とかドイルの恐竜の話などで、このシリーズを図書室で借りては読み耽っていたものだ。



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これがまさに「僕が小学生の頃に読み耽っていたシリーズ」だ。小3の時に級友の藤本輝之くんに薦められて読み始めたことも覚えている。

このシリーズを大人になってからも読みたくて、ネットオークションなどでも見ていたがやはり高価だった。探していたら内容は変わらない復刻版みたいなものがあるのを見つけたので、全20巻を買い、僕がこうしたSFに没頭していた頃(小3〜小5くらい)と同世代の息子にも貸したりしてた。

しかし、どうにも賛同できないくらいにイラストや装丁がダサくて、同じ作品を呼んでいるとは思えないほど、大人になって買ったものを「イイ本」だとは思えていない。

コレクターのつもりなく、書籍は内容を読めればイイと思っているのだけど「月世界探検」や「キャプテンフューチャー」は布の装丁のしっかりとした本で読めば、もっとその世界に没頭出来るのに…と思えてならない。

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この2つを見れば……。
とにかく復刻再版を望む。