魚を熟成させる

先日、ヒラマサがとても安く売られていた。
品質を鑑みればとてもお買い得なものが、更なる値引きで半額になっていたのだ。

迷うことなどなく、すぐにその立派な切身を買ったのだが、買ったその日に刺身を食べたい気分ではなかった。ならば買うな…ということなのだろうけど、価値ありそうなものが安くになっているとそれを買っておかなければ損をしたように感じる。根っからの貧乏症であり、我ながらその意地汚さに呆れてしまいそうだ。


さて、僕の意地汚さは置いておき、買ってきたヒラマサは熟成させることにした。魚を熟成させる事自体は珍しいことではない。

今回のヒラマサと同様、冬になって鰤の切身が半額では売られていたりすると、これは全て買い占めたくなるほどだ。貧乏症でもあるが、そのくらい鰤が好きだというのもあってのことだ。

こうして買ってきた鰤は、西京漬けやら粕漬けにもするが「塩鰤」にして焼いて食べるのが一番好きだ。塩をして、余分な水分を抜いて、冷蔵庫で保存するだけ。

熟成させると言ってみたところで、僕が行うのは「塩をして冷蔵庫に入れること」と「熟成途中でそいつを食べてしまわないように我慢すること」。この二点だけだ。


今回のヒラマサも同様の手順なのだが、刺身として美味く食べる熟成を考えてみた。塩鰤の時よりも塩は少なく。そして、魚から出てくる水を吸い取られせるキッチンペーパーは度々交換した。

熟成を開始してから5日過ぎた日にヒラマサを刺身にして食べてみた。


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鯵科の魚が持っている歯ごたえは、新鮮な時と比べると随分となくなるのだけど、ねっとりとしたような旨味が比べ物にならないくらい増している。昆布〆にでもしたかと思うくらい。実際にねっとりとしている訳ではない。

少し日のたったイナダの刺身を食べようとすると、生臭く感じてしまい「りゅうきゅう」にして食べることもある。しかし今回のヒラマサは全く生臭くなかった。

魚から傷むのは、まずは魚の身の中に含まれる水分が生臭くなり良くないものへと劣化していき、その影響で身全体も悪くなってしまうように感じた。

まず劣化の引鉄となる水分を取り除いておけば、身の劣化はそれほど早くには進まずに、旨味成分が作られていくのだ(きっと)。