続 魚の熟成

先日の熟成ヒラマサがあまりに美味しかったのと、熟成による旨味の上昇に興味が増したので、先週からシイラの熟成に取り掛かった。


シイラは世の中では不当な扱いを受けているのではないか?と思うほど、夏になると安価に売られている。僕はこの魚が好きで、夏になるとよく食べる。この夏もムニエルにして、そして西京漬けにもして食べたと思う。

夏が旬の魚だから、秋になって売られているものはそんなに美味しくないのだろうと勝手に思っていたら、先日見たテレビで「秋の名残のシイラは美味い」というようなことを言っていた。


そんなシイラがやはり安価に売られているのだから買わない手はないだろう!大きな魚だから、熟成させると更に旨くなるに違いない!と思って取り掛かった次第。


買ってきたシイラはそもそも刺身用に売られているものではなかったので、加熱して食べることを前提に多めの塩を振りかける。シイラは水分含有の多い魚だから次々と出てくる水分を数日間、キッチンペーパーで給水して熟成させる事、一週間。

多少なりとも生臭くなるかと思っていたが、生臭さはない。塩によって締まった身は心なしか旨味が増しているようにも見えた。

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こいつをじっくりじんわりとバターソテーにして食べたのだけど、美味しかった。


…しかし、冷静に手前味噌にならないように批評するなら、シイラのソテーの美味しさはフカフカした身の柔らかさにあるとも思う。

塩で締めて熟成されたシイラは、僕の知る「身の柔らかさが身上のシイラのソテー」ではなかった。噛みしめると出てくる旨味は凄い。しかし、それはシイラを食べているというよりも、脂のあまり乗っていないワラサを噛みしめて食べているような気もした。



鰤を塩で締めて「塩鰤」として食べることが美味いのは以前から実践しているのでよく分かっているつもりだ。脂の乗った鰤だからこそ、水分を抜いた身の旨味とじわりと出てくる脂の旨味がよく調和するのだろう。

今回のシイラの熟成はそれ自体を否定するものではないし、すぐに傷んでしまうシイラが一週間経った後にも美味しく食べられるという「保存術」としては、とても面白い経験だった。

しかし、シイラはその足の速さに気を遣いながら、買ったらすぐにフカフカの状態で食べるのが「シイラに対する礼儀」であるように感じた。