2023年の桜

これは昨夜、3月の末日の夜のことだ。

バタバタと気忙しく過ごしているうちに、我が家の近所の桜も満開を迎えていた。

桜の名所なんてものは全国に点在するし、市町村レベルでも有名なところは沢山あったりする。桜の花のパッと咲く華やかさは見事に見えるし、すぐに散ってしまう刹那さも日本人の心を捉えるものだと思う。

先週末に長女が新生活のために引越したのだが、その時は僕らの住む町の桜はまだ咲いていなかった。「引越までに桜が咲けばと思っていたけど、残念…。」なんてことを言いながら二人で引越作業を行い、数日後に戻ってきたら桜は既に満開の手前くらいに咲いていた。僕が引越作業で目を離している隙を狙って、サッと咲いてパッと散ろうとしているかのような動きだった。

咲き誇る桜を眺めながら数日を過ごす。そしていよいよ数片の花弁が散り始めてきたので、焦るような気持ちで昨夜、夜桜見物に出掛けたのだった。

僕のウチから歩いて5分もしないところにある交差点に咲く桜。毎日のように通り、僕の生活に溶け込んだ場所だからなのか、僕はこの場所の桜が町一番だと思っている。

自宅の冷蔵庫から缶チューハイを一本持ち出して、桜を眺めながらそいつを飲む。この数日、春らしい暖かな日が続いているが、夜になるとまだそこまで暖かくもなく、キンキンに冷えていやがるチューハイを飲んでいるとすっかりと寒くなってしまった。

30分くらい桜の木の下で過ごした僕は帰宅することにした。帰りにドラッグストアに寄ろう。これは出掛ける前から決めていたことだ。ドラッグストアでソーダ水を買い足して、ウチに帰ってから桜の残像を楽しみながらウイスキーを飲もう…そんなことを考えながら歩いていたら、店の前で末娘に出会った。

彼女はアイスを買うためにここにいたのだが、「近くに住むとは言え再会するのもなにかの縁!こりゃ飲むしかないだろう…」という訳で、僕はドラッグストアで缶チューハイとジュース、そしてイカ煎餅みたいなのを買って、末娘とともにさっきの場所に戻った。

交差点の桜の木の下で缶チューハイを飲むおっさんとジュースを飲む中学生。末娘とは先週末の引越の様子などを話しながら、「やっぱ、ここの桜が一番だよな」と反芻した。

あと数日すると、桜が満開だったことすら分からなくなるくらいに散ってしまうのだろう。そして、末娘も受験生としての新たな学年での生活が慌ただしく始まるのだろう。

年度が変わる直前に彼女とともに桜を楽しむことが出来、とてもイイ夜だった。